暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
アリシゼーション編
episode1 隠された真実3
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ますます体が弱ってしまうという悪循環になっていたこと。

 だから俺は牡丹さんから、彼女のことを、初めて聞いたようなものだった。

 SAOが終わった……世間的に言うのであれば件のALO事件の後、彼女は記憶の大部分がうまく引き出せない状況で生還を果たしたということ。記憶のなかでも、特にSAOの内部での思い出がほぼ完全に自分の意志では想起できなくなっていたこと。

 それでも、夢の中で「空色の女の子の物語」として、それを楽しんでいたこと。
 そこにいる、「手足の長い青年」の顔が、どうしても見えなかったこと。

 最近出版された『SAO事件』を綴った本を、何度も何度も楽しそうに読みかえしていたこと。

 そして、昨日。

 そんな彼女の病態が急変し、再び意識が失われたということだった。





 「リュウ、が、全力を尽くす、……と、い、言って、いました。……あの男は、『神月』随一の、天才です。その腕だって、た、確かです。……しかし、」

 牡丹さんの言葉が、嗚咽に歪む。
 いつだって冷静にその言葉を紡いでいた口が、切なげに揺れる。

 「……し、しかし……彼女が……ソラ様、が。弱って、おられた、の、も、事実で……」
 「わかりました。……牡丹さんのせいじゃないですね」
 「しかしっ!!! わ、私はその可能性を知っていたのです! ソラ様にもう一度発作が起こる可能性があることをっ! ご主人様が、二度とソラ様に会えなくなるかもしれないのにっ!!! それを先送りにしていたのですっ!!!」

 牡丹さんの叫び声が、泣きそうに掠れた。

 彼女の気持ちは分かる。自惚れではなく「俺をもっとも愛してくれた」彼女が、俺のことを分からないなんて。分かってもらえない俺も平気ではないだろうが、それを「わかってやれない」ソラの精神的な負担は俺の比ではないだろう。

 「わかってます。それでも、ソラに俺と会うのは『少しでも俺のことを思い出せてから』にしたかった。そうでないと、きっとソラが耐えられないだろうから。……ソラがそんなにヤワかどうかは俺は分かりませんが、実際会って話していた牡丹さんがそう考えたのなら、そうなんでしょう」
 「その結果が、今の状況なのです!!! これが、こんなのが、彼女の、」
 「そうは、なりません」

 彼女の最後になるかもしれない……の言葉を、俺は遮った。

 「絶対に、そうはなりませんから」

 力強く、もう一度遮る。

 俺にはその確信があった。今この段階において既に彼女が最後を迎えているのであれば、「あの四神守』」の連中が明日集う意味がない。彼らが集まったのが、ただ俺の哀れな末路を笑うためだけであるはずがないのだ。

 何かある。
 「俺」が関わる……関われる何かが
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