第二章
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第二章
「世の中っていうものは」
「それでどうして完全に奇麗にできるんだい?ましてや革命って言って」
「革命で」
「金持ちとかを殺すんだろう?だったら僕だって危ないよ」
言葉が少し自嘲めいてきた。
「実家があれなんだしね」
「そうなりますか」
「なるよ。何しろ彼等はそれに連なるのなら何をしたっていいっていう考えなんだから」
こうした話がある。羽仁五郎という学者が論戦をしていて相手に対してこう言ったのだ。
「そんなことを言ったら革命の後で君の手に縄がかかることになるぞ」
この言葉が民主的でないのは言うまでもないがそれ以上に革命というもの、共産主義というものが何なのかを見事に言い表している。即ち共産主義者というものは民主主義を実現させようとしているのではないのだ。邪魔者を片っ端から消していく全体主義を目指しているのである。それは当時からわかっていたのだ。彼等は確信犯でそれを行おうとしていたのである。子の言葉にはそれが出ている。
「僕だって当然危ないね。まあ僕のことは置いておいてね」
「はい」
また話が元に戻る。
「彼等には賛同できないよ、絶対にね」
「そうですか」
「けれどこれから彼等が大きな力を持つのは事実だね」
「そういえば何処かの教授が日本をファシズムだって言っていますが」
それもこの時からはじまっている。戦後五十年以上こう延々と言われてきた。それへの細かい検証は五十年以上行われなかったが。
「それはどう思われます?」
「それだって同じだよ」
作家はそれについても忌々しげに言い捨てた。
「負けたから言っているだけさ」
「やっぱりそうですか」
「確かに軍の目はあったよ」
それは前置きされる。
「それでもね。堂々と革命が起こったら殺してやるなんていう人間はいなかった筈だよ」
「そうですね、それは」
これは編集者も頷くところであった。
「いませんでしたね、そこまでは」
「特高やら憲兵は厳しかったけれどそこまでは言わなかったよ」
「どういうことなんでしょう、今は」
「あれが正しいって思っているんだよ」
作家はまたしても忌々しげに言い捨てた。
「自分達がね。それに」
「それに?」
「今度は自分達が権力者になりたいんだろうね。浅ましい話さ」
「権力者ですか」
「いいかい?君」
ここで作家は少し親しげに編集者に対して声をかけた。もうかれこれ十年以上は知っている間柄だがそれ程馴れ馴れしく付き合ってはいない。だからこうして親しげに声をかけることも珍しいことであったのだ。彼は今その珍しいことをあえてしてきたのであった。
「権力者になったらどうかしてやるとか言うのは卑しいよ」
「卑しいですか」
「だってそうじゃないか。今に見ておれなんて言うのは」
彼はそこを指摘す
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