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作家
第二章
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る。
「負け惜しみの言葉だよ。それを議論していて相手に脅しに使うんだからね」
「そうですね。本当に」
「まだ戦争前はよかったよ」
 ここまで話して憮然とした顔に戻してまた言った。
「そこまで卑しくはなかったと思うよ」
「そうでしょうか」
「何か何もかもが急に変わったね」
 今度の言葉はそれであった。
「戦争を賛美していたのに戦争は駄目だってなって。これで共産主義にでもなったら」
「どうなるでしょうね」
「少なくとも碌なことにはならないね」
 これだけははっきり言えるのであった。
「とんでもないことになるよ。絶対に平和にはならない」
「なりませんか」
「ソ連の軍隊が東京に来る」
「あの連中が」
 編集者はそれを聞いてだけで顔を顰めさせた。彼は生理的にソ連とその軍隊を嫌悪していたのである。何だかんだで国民の多くは戦後間も無くから長きに渡ってソ連とその軍隊を嫌悪してきていた。満州のこともあるし他にも色々と聞いていた。結果として国民の方が知識人より遥かに賢く常識があったのである。戦後日本の特徴として知識人の腐敗の他にその無能さや卑劣さも挙げることができよう。
「そしてやりたい放題やって人がどんどん殺されるね」
「最悪じゃないですか」
「それで終わりじゃないよ」
 作家の言葉はまだ続くのであった。
「革命政府とかができて僕達は共産主義の奴隷になるさ」
「そしてあの連中が権力者ですか」
「どうだい?こうした未来は」
「小説でも勘弁願いたいですね」
 編集者はそういった作品は書かないように述べてきた。

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