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緋弾のアリア-諧調の担い手-
その手に宿る調律。
そして想いは力となりて
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一方的に話し掛けられ、一人になりたくて、誰にも干渉されたくなかったのに、それを言葉にするだけの気力すらも俺にはなかった。

初めて彼女に会った時に感じた第一印象は、憎しみと嫌気。
その今を生きているという少女の在り方、それが俺には眩しすぎた。

俺が何も語ろうとはしなくても、それでも彼女は笑みを絶やさずに語り続けてきた。
また来るね…と、彼女は俺に微笑み、そうして去って行く。そして次の日も、その次の日もやって来た。

ただただ、その繰り返しだ。

そして何時の間にか、俺は彼女に興味を示していた。
そうして彼女が訪れてから幾度目かの時に、初めて会話を交わした。


「…どうして、貴女は俺に構うんですか……?」

「う〜ん、どうしてかな?…君は、どうしてだと思う?」


彼女は悪戯っぽく微笑み、曖昧に答えて、何処か遠くを見据えた。
その横顔には先程までの笑みは消えていて、そうして言葉を紡いだ。


「…君はね、何処か昔の私に似ているんだ」


寂しげな音色で彼女はそう口にした。
その言葉は同情や哀れみからのその場凌ぎの言葉ではないと、理解出来た。

そうして感じ取った、この人も俺と同じ様な経験をした事があるのだと。


「……昔、の…?」

「そう私もね、九歳の時に両親を殺されているんだ。……その光景を目の当たりにして、今の君の様に心に鍵を掛けて、過去から、そして現実から、耳を塞いで目を瞑って背いてきた…」

「……っ…」


静流は自身の制服の袖を捲り、その左腕を露にする。思わず俺はそれに息を呑んだ。
その腕には痛々しく、その過去を想起させるリストカットの痕が残されていた。


「…私はそうして、生きる事にも疲れて、死ぬ事を選んだ。でも、死ぬ事は出来なかった」


そう静流は笑顔を浮かべて俺に語り掛ける。
だが、その瞳からは頬を伝う一筋の雫があった。


「私には一歳年下の、君と同い年の弟がいた。その子が、私にこう言ったんだ」


―――お姉ちゃんまで、僕の前からいなくなっちゃうのは嫌だよッ!!


「ってね。そうして私は現実に目を向けた。現実にはまだ、私を迎えてくれる家族がいるんだってね…」


そう言いながら、彼女はその涙を拭った。
それとは同時に、今度は不意に俺の瞳から涙が零れ始めた。


「こら、泣かない泣かない。…さて、つまないお話をしちゃったね。霧嗣くんも、もう少しだけ現実に目を向けてご覧?…きっと君の事を心配して、迎えてくれる人がいる筈だよ?」


そうして彼女は、制服が濡れる事を気にせずに俺を抱き留めた。
涙は枯渇する事無く、流れ続けた。それは壊れた水門の様に、無尽蔵に流れ出て行く。
今まで溜めていたもの
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