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緋弾のアリア-諧調の担い手-
その手に宿る調律。
生れ落ちる生命
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いで美味しい。こちらも絶品と言える一品だ。

おやつの時間こそ、至福の時だと実感する。
思わず、顔の筋肉が蕩けて破顔する。
漫画やアニメで例えるならば、作画崩壊もいい所だろう。


「ふふっ、そんなに急いで食べなくても誰も取りませんよ?」

「そうですよ、もう少し落ち着いても大丈夫ですよ時夜様?」


一心不乱に和菓子を交互に食べる俺を見て、微笑ましい笑顔を向ける三人の姉。
環お姉ちゃんが、口の端に付着した餡子を拭き取ってくれる。


「…時夜、本当に何もなかった?」


おやつの時間の前から聞かれ続けているが、やはりそれに該当する記憶はない。
ただ、例を挙げるとしたら。


「だから、何もないよ?……ううん、ただちょっと変な夢を見ていただけ」

「夢、ですか?」

「…うん、昔からずっと見てきた夢なんだけど。ずっと思い出す事の出来なかった夢」


俺は長年見続け、漸く思い出す事の出来た夢を頭に浮かべる。
目覚めた今でも、あの存在の放つ膨大な力に身が竦みそうになる。

あれは一体、なんだったのだろうか?
あの存在に比べると、自分が酷く矮小な存在にすら思えてくる。

俺はあの夢の内で出会った“鞘”の姿を思い浮かべる。

―――何だ?

思考の海から意識を引き戻し、その淡い眩しさに思わず目を細める。
そうして何が起こっているのか理解出来ない俺は、周囲を見回す。


「……この膨大なマナは」


そうして俺は姉達の表情が神妙な面立ちになっているのを目にする。
それと同時。

―――ドクン、ドクン

光の殻を破らんと、非才なこの身でもその膨大な力の波動を感じ取る事が出来る。
それは俺の身体、精神の内側から激しく脈動している。

生誕の雄叫びでも上げるかの様に、それは激しく世界に轟き始める。


―――……■□■


声が聞こえた。
あの夢の中で相対した存在の声が。

そうして、光の殻を破って此処に新たな存在が生れ落ちる。
……それは、俺の愛する今と言う刹那を破壊する音であった。

そしてそれと同時に、俺の新たな生を祝福する祝砲の音でもあるのだ。


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