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緋弾のアリア-諧調の担い手-
そして彼女の道行きは
そして彼女の転生記録
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―――閉ざされていた意識が、引き戻されて行く。


まるで点と点が繋がる様に、此処に至るまでの事柄は曖昧。
白昼夢を見るかの様に、実がある様でその実体は、まるで存在しない。

だがそれ故に、“変わった”と一際、明瞭と理解出来た。
……“自分”が“最後”に見た光景は、総てを飲み込む程に大きな大きな、世界に開いた穴。

気が付けば変わったと。世界が反転したかの様な、そんな意識があった。
裏と表と表と裏が引っくり返る様な感覚。感触と言っていい程に、それをありありと感じる事が出来た。

最初に知覚したのは、“私”という自己、その意識と存在であった。
この時点の、まだ生まれもしていない赤子がはっきりとした自我を持つ事は異常であり、異端であろう。

普通じゃない。
……そうだ、普通ではない。自分は普通ではない。文字通りの異端児だ。

自身は神という存在によって、輪廻転生という輪より外れた魂。
ニューゲームという形で、記憶を引き継いで、新たな生を獲得した存在。

“自分”という存在は一度死んで、“私”という来世へと移ったのだ。
そうした自覚と、記憶が魂に色濃く刻まれている。


今此処にいるのは、前世での自分である“日朔真綾”という存在ではない。
今此処に存在するのは、未だ体を成す名前もない私という存在だ。


目を見開く事は出来ない。身体を動かす事は出来ない。それでも。
それでも自ずと解る、理解出来る。感じ取れる。その常闇の中で。
母胎という鳥籠の中は、赤子である私を祝福するかの様に柔らかく、そして優しく包み込む。

母親の抱擁をその身、一身に感じ取る。
羊水に浸かりながら、私はそう心の中で呟く。

そうして不意に、過去へと意識を向ける。

……つまらなかった。ああ、つまらなかっただろう。
今になって自身の前世を、日朔真綾の人生を振り返る。つまらなかった人生だったと、そう思う。

もしも、他者が自分の齢20にも満たない人生を覗き見る事があるならば、十人十色でつまらないと答えるだろう。

それは私自身も理解している。我ながら、人としては何処かが欠落していた。ズレていた。
長い目で見ても、それはありきたりな、何処にでも転がっていそうな色の無い物語。

……それでも、ほんの僅かにも、私にも楽しいと思う瞬間は確かに存在したのだ。
真っ当な人生を送っている者ならば、気にも留めない様な、道端の石ころ程度の記憶。

それでも私にとって。
“彼”と駆け抜けた日々。空虚な人生を送っていた私にとってそれは、圧倒的な現実感であった。
そしてそこには、確かな色があった。

彼と過ごした刹那こそが、私の唯一の黄昏。

もし、もしもだ。
私の様に二度目の与えられるのならば、人
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