暁 〜小説投稿サイト〜
甘え下手
思いがけない誘い
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 今日は中々仕事が進まない。それは、昨日母から言われた言葉のせいなのだろう。「お見合い、してみる?」「はぁ!?」「あのね、麗菜ももう30になるしそろそろ結婚も考えなくちゃいけなくなってきてるじゃない?それに、麗菜と結婚したいって人がいるのよー」正直驚いた。母の言うことはもっともなのだろう。でも、私には好きな人がいるのだ。立花社長という人が・・・。
 立花楓太、32歳。私より3歳年上で会社の社長。仕事には厳しい人で、皆からは陰で「鬼」と呼ばれている。(そこが好きだったりする)顔だちは綺麗で思わず見とれてしまうくらいだ。切れ長の目、スッと通った鼻筋、キュッと結ばれた綺麗な唇。それに比べて、昨日見たお見合い相手(まだ決まっていない)は散々だった。
 多田義昭、38歳。大手企業会社「delete」の社長。巨体にハゲ。トロンと垂れている目、大きな鼻、分厚い唇。立花社長とは大違いだ。
 物思いにふけっていると、ドンという音がした。資料の山が置かれている。顔を上げると笑顔の立花社長が・・・。立花社長は怒ると何とも素敵な笑顔で笑っているのだ。「すっ、すみません!」「いえいえ、何か必要な考え事でしたのでしょうし、あぁこの資料今日中に終わらせといてくださいね。」にこやかな態度に悪寒がはしる。絶対これ残業だ・・・。自分にも非があったと認め作業に取り掛かる。 努力もむなしくやはり、残業。諦め作業を続ける。振り返った時、立花社長も残業だということに気付き途端にあれだけ苦しかった残業が至福のひと時と変化した。コーヒの差し入れでもしようかと立ち上がり、コーヒーを立花社長の元へと運ぶ。「お疲れ様です。」「ん?あぁ。ありがとう。」しばらく私の顔を眺める立花社長に私の頭の中ははてなマークでいっぱいになった。「麗菜さん、何でオシャレしないの?」唐突な質問に驚く。立花社長は仕事にしか関心がないのかと思っていたからだ。「私もとからかわいくないので似合いませんし・・・。」すると、いきなり立花社長の手が私の頬に触れた。「麗菜さんかわいいよ?目は大きいし、鼻もスッとしてるし、口だって今でいうアヒル口?じゃないか。」突然の立花社長の発言に驚く。立花社長ってこんなキャラだっけ?それにさっきさり気なくかわいいって言われた?「やだなー冗談やめてくださいよー」笑ってごまかそうとする私に立花社長はフッと笑みをもらした。「麗菜さんの駄目なところは甘え下手なところかな?」サラッと、でも的確に言われて心臓がチクッとするのを感じた。こんな気持ちになったのはいつぶりだろう?「ね、今日俺の家こない?」「え・・・?」「決定、ね。」イタズラっぽく微笑む立花社長を見ると言葉が出なくなった。
 そして、立花社長の車に乗せられ家に向かう。助手席は意外と運転席に近くて心臓がバクバクと音を立てているのが聞こえそうなほどだった。車の中で
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