6部分:第六章
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の菊を持って来た。黄色く見事な色の美しい菊だった。
「これで宜しいでしょうか」
「有り難うございます」
朱雀はその菊を見てそのうえで執事に礼を述べたのだった。
「それではそれをですね」
「どうされるのですか?」
「押し花にして。それで送ります」
こう言うのだった。
「英吉利にまで」
「英吉利にですか」
「今ならまだ送れますね」
深刻な顔だったがそれは見上げている顔だった。
「倫敦に」
「倫敦は今独逸の爆撃を受けていますが」
そうした状況だったのだ。今丁度アンの国である英吉利と独逸は海を挟んでそのうえで空において戦っていたのだ。英吉利の旗色は悪く敗北の時間の問題ではとさえ言われていた。
「それでも宜しいのですか?」
「アン様が生きていれば」
朱雀はそれでも言った。それでもだった。
「きっと受け取って下さいます。ですから」
「では。送られますね」
「はい」
今度は毅然とした声だった。
「送ります。この文と菊を」
「わかりました」
執事も意を決した顔で頷いたのだった。そのうえでまた彼女に告げた。
「ではこの花。倫敦まで送らせて頂きます」
「御願いします」
「奥様。この手紙は何があろうと届きます」
そして彼はこうしたことも言うのだった。
「必ず」
「必ずですか」
「奥様の御心は誠です」
だからだと言うのである。
「この世で最も強いもの、それは誠ですから」
「私は。自分の誠を信じています」
朱雀はそれは確かな言葉で述べた。
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