緋色の空
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それだけじゃ終わらない。
「解らない?ジェラールの居場所はこの世界に存在しないのよ。ゼレフの亡霊に取り憑かれ魅入られたその時から!自らの立てる居場所を自らの手で潰したの!その結果がこれ、自業自得よ。私は罪人を庇う為に己を罪人にはしたくないわ。自分勝手だと言いたければ言うといい。あれほどの罪の犯した大悪党を庇う人間なんてアンタ達くらいなものよ」
ティアの言葉が鋭い刃のようになり、休む暇なく放たれていく。
その頬に赤みが差し、ティアとしてはあり得ないほどのスピードで感情が高ぶっていく。
「ティ・・・」
「触らないで!」
様子がいつもと違うと気づいたナツが手を伸ばす。
が、ティアはその手を勢い良くはたいた。
「アンタには解らないわ・・・いつも誰かから必要とされてきたアンタには!」
荒れる海のように荒々しく、叫ぶ。
「私やジェラールみたいな人間の事なんて、一生解らないわよ!」
青い瞳にありったけの怒りや苛立ち、殺気や憎しみを宿し、ナツを鋭く睨みつける。
表現するとすれば『キッ』より『ギッ』の方が似合うだろう。
これ以上ないくらいに鋭い睨みに、ナツは思わず半歩下がった。
「っ・・・」
「ティア!」
ティアは一瞬しまったと言いたげな表情を浮かべると、その場から逃げるように駆け出す。
その背中はすぐに見えなくなり、ヴィーテルシアは不安そうに瞳を揺らした。
ナツ達のいる場所で小規模な騒ぎが起きているとは知らないエルザは、少し距離のある丘の上にいた。
表情が見えない程に俯いたエルザの脳裏に、とある記憶が流れていく。
『ジェラール・フェルナンデス』
『うわー、覚えづれぇ』
楽園の塔、奴隷時代。
奴隷になってすぐ、自己紹介をしている時の事だった。
『そういうお前も、ウォーリー・ブキャナンって忘れそうだよ』
『エルザ、お前は?』
『私はエルザ。ただのエルザだよ』
困ったような笑みを浮かべ、幼いエルザが答える。
『それはさみしいな』
それを聞いた幼いジェラールは小首を傾げる。
すると、ジェラールはエルザの背後に回り、さらっとした緋色の髪に触れた。
『おおっ』
『ちょ・・・何よぉ』
突然髪を触られ、エルザは戸惑ったように頬を淡く染
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