暁 〜小説投稿サイト〜
菊と薔薇
1部分:第一章
[2/2]

[9] 最初 [2]次話
。江戸時代では外様であり幕府の政治に携わることはなかったが名門として知られていた。今は侯爵として華族としてあり事業も幅広く行っている。朱雀はその家の娘なのである。
「恥は知っています」
「それでは」
「例えそのように繁栄している国であっても」
 朱雀の言葉が毅然としたものになっていた。
「我が国にも武士の国としての誇りがあります。それを忘れずに参りましょう」
「その御心意気です。それでは」
「今日は作法の手ほどきですか?」
「いえ、英吉利の言葉です」
 執事はこう彼女に述べた。
「それですが」
「はい、わかりました」
 朱雀も素直に頷く。こうしてその英語の勉強に入るのだった。
 倫敦に着くとまさに執事の若本のいった通りだった。街は至る道が全て石畳であり雨が降ろうとも汚れることはないのがわかる。家々は全て煉瓦でありその赤い色が実に美しい。橋は石であり実に強くあると共に彫刻の様に美しい。街行く人々は皆大きく背筋は伸びしかも立派な服を着ている。馬車までが日本のそれとはまるで違い馬は大きく立派で馬車自体も見事なものだ。これが倫敦であった。
「凄いですね」
「全くです」
 二人はその倫敦を馬車で進んでいた。その立派な馬車で。
「それで私達が今から行くのは」
「はい、ノーザンプール家の御邸宅です」
 執事は朱雀と向かい合って座っている。そのうえで彼女に話したのだ。
「そちらに今から」
「そしてこの国で二年」
 留学でである。こうした留学は当時では滅多にできるものではなかった。ましてや婦女である彼女が。これは極めて異例のことだが彼女の父がこれからは女も世界を知れということで行かせたのである。

[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ