第五章
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第五章
鬼姫は彼を見て声をかけてきた。本当に大きい。まるで男のようだ。いや、男でもここまで大きいのはそうはいないという大きさであった。そのうえ筋骨隆々としておりそれだけを見ても女とは思えない。顔こそ整ってはいるがとても嫁に迎えたいと思うものであはなかった。だがそれでも五郎は彼女の前にやって来た。
(これも娘の為じゃ)
決して自分の為ではない。ここが重要であった。一礼し、そして名乗った。
「それがしの名は渡部五郎と申します」
「渡部五郎とな」
「はい、鎌倉にいる者です」
「ふむ、鎌倉にか」
鬼姫はそれを聞いて考える目を見せてきた。
「左様か」
「左様です。そして」
彼は言った。
「貴女と勝負したい」
「ほう、私とですか」
鬼姫はそれを聞いて不敵な笑みを浮かべてきた。
「それはそれは。それでは」
「然る後に」
鬼姫が前に出ようとしたところでまた言う。
「むっ!?」
「貴女を嫁に貰い受けたい」
「なっ」
「何とっ」
これを聞いて周りの者達まで驚きの声をあげた。今までこんな言葉は聞いたことがなかったからだ。これで驚かない筈がなかった。
「本気ですか?」
「無論」
五郎は答える。
「冗談でこのようなことは申しません」
「わかりました。その申し出受けましょう」
「おおっ」
「これはまた」
周りの者達はまたしても驚きの声をあげた。この日の彼等は驚きの連続であった。
「宜しいのですかな」
「はい。父上には私から申し上げておきましょう」
この時代は本人の一存ではとても結婚なぞできはしなかった。しかし鬼姫がここでこう言えたのはやはり彼女を貰おうという者がいなかったせいであろう。そもそも鬼と呼ばれているような人物を嫁に欲しいというのは相当な変人である。実際に五郎は変人と言えた。
「それで宜しいですね」
「はい。それでは」
「まだ何か」
結婚の話の後でさらに話を進めてきた。
「貴女の腕前、拝見させて頂きましょう」
「貴方の相手に相応しいかどうかでしょうか」
「いえ」
この言葉には首を横に振る。
「それは違います。実はですな」
「ええ」
「これは娘の為なのです」
「ご息女の」
「はい」
鬼姫の問いにこくりと頷いてきた。
「その通りです。だからこそ」
彼は言う。
「貴女の強さ、見てみたい。嫁入り前の娘の母親となるのに相応しい腕か。そして心の持ち主なのか」
「実際に組んでみて確かめたいのですね」
「左様。宜しいですかな」
「わかりました」
鬼姫も拒みはしない。満面に笑みを浮かべて応えるのであった。
「それでは参ります。宜しいですね」
「ええ」
五郎はそれに頷く。互いに構えを取る。
「では確かめてみて下さい」
「わかりました」
二人
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