第一部 vs.まもの!
第4話 もくてき。
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信じられない」
ウェルドは真鍮のドアノブに手をかけた。
「俺の目的や思想をあんたの基準で査定される筋合いはないぜ。俺は遺跡内で知識をわけあう相手も、遺跡内でどう行動するかも、俺自身で決める」
アーサーでさえ、もはや、引き止めようとはしなかった。ウェルドは教会の扉を開けた。
黄昏時の道を行き、静まり返った宿舎に戻る。大剣をおろし、砂除けのローブを脱いでベッドに横たわった。
額当てを外し、瞼に腕を置いた。
「……妹、か」
※
夢を見る。
紅い、紅い。
※
夢の記憶は残らない。いつも悲鳴を上げて起きるのみだ。
悲鳴が夢を壊してしまうから。
「きゃあっ」
飛び起きたウェルドは、自分のものではない叫び声を部屋の中で聞いた。気付いた時にはいつも通りの格好でいる――ベッドの上で上半身を起こし、汗にまみれて息を切らしている姿。
ウェルドは長い前髪を鷲掴みにしながら、動悸と息切れが収まるのを待った。
いつもの悪夢だ。決して覚えていられない……覚えていたいとも思わない……もはや日常になってしまいそうな……だけど、決して慣れる事のできぬ悪夢。
「な、何なの?」
隈が浮く鋭い目を声に向けると、ノエルが隣に立っていた。
「大丈夫なの? ウェルド……随分うなされてたけど……」
「……ああ」
前髪から離した手をひらひらと振る。
「気にすんな、いつもの事だからよ」
「いつもって」
「それよりどうしたんだ?」
「念のため、出発前に様子を見に来たの。気が変わる事もあるでしょ」
「残念だったな」
ノエルは落胆露わに目を逸らした。
「……そう」
「早く行ってやりな。アッシュとやらが待ってるんだろ」
「私、あなたを悪者にしたいわけじゃないから」
ノエルは背を向け、部屋から出て行こうとする。
「もしかしたら、ばったり会うかもね。……それじゃ」
「ノエル」
「何?」
「昨日の一戦で気を良くするな。強敵ってのは油断した頃に出てくるもんだぜ」
「脅かさないでよ!」
「馬鹿な気を起こすもんじゃないぜ」
ウェルドは額当てで汗を拭き、言った。
「……あんたは、命を大事にしな」
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