私がついている
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こう言うのが正しいでしょ。『私デス、リチャードデス』」
「・・・なるほど」
聞き逃してしまえばそれでおしまいのたった一言を、ティアが聞き逃すはずがない。
いつだって冷静でいられる長所を持つ彼女にそんな簡単な罠は幼稚過ぎたのだ。
一方、エルザはジェラールに歩み寄っていた。
「とりあえず、力を貸してくれた事には感謝せねばな」
「エルザ・・・」
笑みを浮かべるエルザに目を向け、すぐに目を逸らす。
「いや・・・感謝されるような事は何も・・・」
謙遜しているが、ジェラールがいなければ勝利は不可能だった。
あの時ナツに咎の炎を、ティアに罪なる星空を与えたからドラゴンフォースと竜の双眼を発動させる事が出来、勝てたのだから。
「これからどうするつもりだ?」
エルザが問う。
その問いに、ジェラールは目線を逸らしたまま俯いた。
「わからない」
エルザの目に厳しさが戻る。
岩に2人で背中を預けて、2人は話す。
楽園の塔の再会では不可能だった会話を。
「そうだな・・・私とお前との答えも簡単には出そうにない」
俯くジェラールの体が、小刻みに震える。
「怖いんだ・・・記憶が戻るのが・・・」
今回の件でエルザやミッドナイト、ナツやティアは揃って似たような事を言った。
『悪党』、『罪』・・・他の言葉も含め、多くがジェラールを悪として捉える言葉だった。
記憶はない、でも自分は悪党だった・・・その想いを抱えてしまえば、記憶が戻る事に恐怖するのも当然だろう。
それを聞いたエルザは、ジェラールに目を向け―――
「私がついている」
優しい笑みを浮かべ、呟いた。
予想外の言葉に、ジェラールの目が大きく見開かれる。
「たとえ再び憎しみ合う事になろうが・・・今のお前は放っておけない・・・」
答えは出ない。長い間敵対していた相手との答えなんて、一瞬で出るものではない。
だけど、エルザはジェラールを放っておけなかった。
何故なら――――――
「私は・・・」
エルザが何かを言いかけ―――
「メェーン!」
『!』
ゴチィン!と。
何かに直撃するような音が響く。
同時に、一夜の奇妙な悲鳴も。
「どうしたオッサン!」
「トイレの香りをと思ったら何かにぶつかった〜」
「何か地面に文字が・・・」
「こ・・・これは・・・」
連合軍を囲むように地面に描かれた文字。
それは―――――
「術式!?」
設置型の魔法、術式だった。
妖精の尻尾ではフリードが扱う、クイックな戦闘には向かないが罠としては絶大な効果を発揮する魔法である。
「いつの間に!?」
「閉じ
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