18話
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』
どこか突き放すような感情を、ボクの感応能力が拾い上げる。
「はい、理解しています。でも、自衛の為に、そうした武器があったらいいな、と思って。以前みたいに墜落した亡蟲と出会う可能性もあるじゃないですか」
正面から意見が対立することを避けながら、ラウネシアが納得しやすいように、あくまで自衛の為である事を強調する。
ラウネシアはじっとボクを見つめてから、そうですね、と短く同意の言葉を発した。
『……時間がかかりますが、一部の樹体に改良を施します』
「ありがとうございます」
小さくを頭を下げてから、ボクはニコニコとラウネシアを見つめた。
「ラウネシアは、やさしいですね」
一瞬、ラウネシアは何を言われたのか分からない様子で、ぱちぱちと瞬いた。
その様子が少しだけおかしかった。
残った果実を口に放り込む。甘い果汁が口の中を満たした。
『カナメは、人としてはまだ若いですよね』
不意に、ラウネシアが言う。
ボクは少しだけ迷った後、ええ、と頷いた。その真意がよくわからなかった。
『相手が、いたのですか。つまり、つがいが』
「……いえ、いません」
僅かな躊躇の後、正直に言った。
『そうですか』
露骨な安堵の感情が、ラウネシアから溢れる。
このラウネシアは、ボクを生殖対象として見ている。それは、明らかだ。
ボクの安全には、相応の注意を払うだろう。
それを利用すれば、ある程度までのコントロールは可能と思われた。
『人は、一生のうちを一体のつがいと添い遂げる、と聞きました』
「そういう人種も、そうではない人種も存在します。個体によって大きな差があります」
ボクはそれだけ言うと、立ち上がった。
「少し、辺りを見まわってきます」
逃げるように、ラウネシアから離れる。
あれ以上、話を長引かせたくなかった。
現時点で食料を依存してしまっているラウネシアから、ストレートな愛情表現を受け取る事は避けるべきだ。
ラウネシアから離れ、トゲトゲ植物のバリケードを目指して進む。
途中、周囲に注意を払いながら進んだが、鳥類はやはり確認できない。
果実意外の食料になりうるものが見つからない。
それどころか、土壌生物も見当たらない。この森は独立した生存能力を保有しているのだろうか。
ふと、足を止める。弱った樹木があった。何らかの病気でダメージを負ったのか、根本が欠け、自重によって大きく疲労している。
日本なら、外科手術が行われていてもおかしくない状態だ。一般的に樹木の外科手術、というと多くの人が怪訝そうな顔をするが、樹木に対する手術や医療といった技術が存在し、実際に行われている。栄養剤を注射で中に送り込む事だってある。
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