04:暁家の至極まっとうな日々
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魔城が、「確定だね」と内心で思っていることを知らずに。
魔城は吸血鬼だ。付け加えるならば、凪沙が唯一その正体を知っていながら恐れない魔族である。魔城は最低でも三十年以上生きている吸血鬼だが、なにがあったのか、古城の父、牙城に拾われ、暁家の養子として暮らしている。
魔城の少女めいた外見は、十八歳程度の青年の物だ。つまり、彼は古城の兄としても大して問題がない年齢なのである。まぁ、その腕に銀色の《登録魔族》であることを示すリングがあれば、だれでもその正体には気付けるのだが……。
「僕の眷獣はね――――木だよ」
「木?木って……あの?樹木の木?」
「そう。その木」
吸血鬼の眷獣の種類は多種多様だ。古城の眷獣の様に獣の姿をとる者が多いが、今は那月のもとでメイドをやっている、世界で唯一眷獣を扱える人工生命体・アスタルテの眷獣《薔薇の指先》はクリスタルでできたゴーレムだ。ほかにも、雪菜と初めて出会った時に絡んできた吸血鬼の眷獣は馬だったし、ヴァトラーの眷獣は龍属性を持つ蛇だ。
だから別に眷獣が木の姿をとっていたとしても不思議ではないのだが――――なんというか、拍子抜けだった。なんとなく魔城の眷獣はもっと強力な存在であるというイメージが強かったからだ。いやいや、そんな非力なイメージでも、実際はすごい能力の眷獣なのかも――――。
「ただの木だよ。実にね。デカいけど」
「そ、そうか……」
魔城の眷獣は、思いのほかシンプルだったようだ。
「うわっ!古城君そろそろ時間だよ!行かないと!!」
「うぉっ」
時計を見ると、そろそろ出発時間になる所だった。
「学校かい?行ってらっしゃい」
「ああ。留守番頼むぜ、魔城兄」
「ははっ、了解」
苦笑しながら手を振る魔城。
魔城は高校生程度の外見をしているが、当然その実年齢はもっと上だ。学校になんて行かなくても問題ない。古城は魔城に手を振り返すと、家を出た。当然の様に、そこには監視役の少女が立っていた。
「おはようございます、先輩、凪沙ちゃん」
「ああ、おはよう、姫柊」
「おっはよー、雪菜ちゃん!」
***
古城たちがいなくなった家の中で、魔城は一人虚空に呟いた。
「そうか……結局、古城は《第四真祖》になっちゃったか……」
魔城は、古城が第四真祖であることを知っている。だが、できることならばそれが嘘であってほしい、と願っていた。本来なら古城は、人間ではなかったが、しかしまた、吸血鬼でもなかったのだから。
彼には、重い運命を背負わなくてもいい道がある。
「そのために、僕がいるんだろうな。……そう思うだろう
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