第一部 vs.まもの!
第3話 いざ、じっせん!
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に次々と火を移していく。ウェルドは飛びのいた。広間はたちまち燃え盛る巨大トカゲの大宴会場と化した。闇は消え、遺跡の冷たさは光と熱によって破られる。ウェルドとノエル、そしてディアスは、遺跡入口の通路へと退避した。
息苦しい。
三人はめいめい通路に開けられた孔に体を寄せ、流れて来る空気を吸う。
広間の酸素が尽きるより早く、魔物達の命が尽きた。火が消え、遺跡の闇がまた濃くなる。多くの生命が燃えつけた後の、粘りつくような湿気が残された。
「お、おい……今軽く俺らも燃えちまうところだったんじゃ……」
「あ、あたしは!」
ノエルが杖を握りしめ、興奮状態でまくしたてる。
「初めてだったのよ! 実戦も実戦で魔法を使うのも! 生き物がこんな簡単に燃えちゃうなんて思わなかったのよ!」
「だが効率はいい」
と、ディアス。
「床の液体を見ろ。傾斜がある。この傾斜と空気の流れを計算し火を放てば、我々は退路を確保しつつ最小限の労力で魔物共を掃滅できる」
「最小限のって、あたしの魔力の消費は無視?」
「娘、実戦は初めてと言ったな」
「ノエルよ、失礼ね!」
「つまり貴様は己の魔力の限界を知らぬという事だ」
ディアスは無視して続けた。
「己(おの)が力の限度を知らぬ者との共闘は、俺の立場としては好ましくない」
「何よ――」
「魔力の限界がわかるまで魔法を撃ち続けろ。その経験は危機に面した際、必ず活きてくる。そしてその危機が今日、我々の身に訪れない保証はない」
何せここは棺桶の町。無法地帯。ウェルドはディアスが言うに任せる。
「だが、もし貴様に忠告に従うつもりがないのなら、直ちに別行動をとらせてもらう」
「偉そうに! これはあたしが受けた仕事よ!?」
「おめぇと俺だろ」
ノエルの頬がさっと紅潮するのが、暗がりにいてもわかった。が、ノエルは愚かではなかった。感情を殺し、口を開く。
「……もし、あたしの魔力の限界が来てもさっきの奴らが生き残ってたらどうするの?」
「戦力は貴様だけではない事を忘れるな」
「その時は俺がフォローするっての」
「ぜ、絶対でしょうね? もし真っ先に逃げたりなんかしたら許さないわよ!」
馬鹿馬鹿しい、という態度を隠しもせず、ディアスが先に立って広間の奥の通路に歩き出した。
ウェルド達は先ほどよりかは安全に、魔物達を焼き払い進んだ。その内、通路にこぼれる藁屑の量や湿度や臭いによって、魔物の巣を探し当てる勘も身についてくる。
ノエルに疲労が見え始めると、ディアスは魔物達を氷漬けにしながら先に立って歩き始めた。
「ねえ、さっきクムラン先生が言っていたトラップカプセル」
「ん? ああ」
ウェルドは巨大なトカゲの氷像をいたずらに剣でつついて壊しながら歩いていたが、腰の革袋に手を入れカプセルを出し
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