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IFのレギオス そのまたIF
糸刻み 追
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本を顔に乗せ、目をつぶりそのまま眠気に身を任せる。
 咥えたままの煙草が零れ落ちる。
 そのまま宙で細切れになって消えた。










 大抵の考え事というのは杞憂で終わる。
 気づいたときに手遅れなこともあるがそれは稀なこと。印象が強いからいつものように思ってしまうに過ぎない。
 そしてそれは今回もご多分に漏れなかったのだろう。

 あれから更に三日。休みからメイファーは何事もなかったように復帰した。レイフォンも何時も通りに来て何時も通りに外にいる。
 何時も通りでないことといえばレイフォンの表情。何時も通りならつまらなそうにするか眠そうにするか或いは楽しそうにするかだったそれは酷く落ち込んだ表情をしている。
 うつむき加減でじっとするように気力が見当たらない。何かあったのだろう。

 だがそれをいちいち聴くほど興味もなかったので何時も通りレイフォンに向けてゴム球を投げる。
 この半年の間で成長し普通の投げ合いではなくなっている。剄を込められた球は宙で二回三回とくの字に軌道を変えさながら魔球のごとくレイフォンへ向かう。
 顔を上げたレイフォンは向う球を見る。だが視線を向けるだけで何もしないレイフォンが緩慢に動こうとした瞬間、届いた球がその顎を下から打ち抜いた。
 
「何をしている」

 仰向けに倒れたレイフォンはレイフォンは起き上がろうとしなかった。近くに転がったゴム球を手を伸ばして取る。握っては弱め握っては弱めと何をするでもなく球を見つめている。
 声をかけられるとレイフォンは上半身だけ起こす。
 だが何も言わずそこから起きようともしない。

「……ししょーは」

 師匠という呼び名は少し前からレイフォンが使う呼び名だ。何度も言い聞かせメイファーが教えた敬称。何ヶ月も掛かり得たまともな呼び名だ。
 その呼び名を呼び、ぽつりとレイフォンは言う。
 
「ししょーは、いずれわかるっていったよね」
「何がだ」
「ぶげいしゃは、がまんしなきゃって。みんなをまもるんだって」

 そう言えばそんなこと言ったなと思い出すと同時、よくそんなことをレイフォンは覚えていたなと思う。
 適当に流されていたと思っていた。子供というのは意外に覚えているものなのだなと感心する。

「……ぼく、がまんできなかった。だから、おかあさんにおこられた」

 それだけいってレイフォンは俯く。
 俯くというよりはこちらと視線を合わせたくないのだろう。
 待っていてもそれ以上レイフォンからは何も言いそうにない。こちらから聞くしかない。
 面倒だがこうなった以上聞かないという選択肢を取っても何もならないのだろう。
 小さく舌打ちしたい気持ちを抑えボサボサの頭を掻きながらレイフォンに近づく。


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