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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八話 クーデター
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るかね?”とバラースに問い掛けたが固まったままだ。サンフォード議長は表情を消している。おそらくはバラースを切り捨てて逃げるつもりだろう。
「認めるかね、バラース情報交通委員長」
「……」
トリューニヒトが問い掛けてもバラースは答えない。チラッとサンフォード議長を見たが議長はそれに応えなかった。それを見てトリューニヒトが苦笑を浮かべた。
「議長を庇っても無駄だよ、バラース。君が受け取った金はサンフォード議長に流れている。そうだね?」
「……」
「彼はもう終わりだ、君を助けることは出来ない」
ラウド達四人が驚いたようにトリューニヒトとサンフォード議長、バラースを見ている。バラースは蒼白になって小刻みに震えている。サンフォードは眼が飛び出そうな表情だ。
「な、何を言うのだね、トリューニヒト国防委員長。私が金を受け取っているなど馬鹿な事を言うのは止めたまえ」
トリューニヒトが苦笑を浮かべてファイルケースから書類を取り出した。
「この書類はフェザーンから提供されたものです。ここにはサンフォード議長、貴方とフェザーン自治領主府との遣り取りが記載されています。これだけじゃありません、通話記録の録画も有ります。貴方がフェザーンの飼犬である事の証拠です」
今度はサンフォード議長の顔が蒼白になった。会議室が騒がしくなった、ラウド達が小声で話し合っている。ターレルとボローンはさっきからずっと無言だ。
「馬鹿な……、何故そんな物が……」
「未だ分かりませんか? 貴方はフェザーンに切り捨てられたのです」
“切り捨てられた?”と議長が呟いた。困惑している、何が起きているのか理解できていない様だ。トリューニヒトがこちらを見た、私が首を振ると微かに苦笑を浮かべた。
「貴方はフェザーンを救うために軍を動かすことが出来なかった。ボルテック自治領主はフェザーンを救うためには、自由惑星同盟軍を動かすには貴方ではなく他の人間に頼るしかないと判断したのです」
「……君を選んだのか……、ボルテックは私を裏切ったのか」
呆然自失、そんな声だ。トリューニヒトが笑い出した。侮蔑が込められた笑いだ。
一頻り笑うとトリューニヒトが生真面目な表情になった。憐れむような視線を議長に送っている。
「ボルテックは裏切っていませんよ、サンフォード議長。貴方はフェザーンにとっては道具でしかありません。ボルテックはフェザーンのために用済みになった道具を捨てただけです。仲間だと思っていたのは貴方だけですよ」
「……」
「先程裏切ったと仰っていましたが裏切ったのは貴方でしょう。同盟を、同盟市民を裏切っていた。最高評議会議長である貴方が」
トリューニヒトが非難しても反応が無かった。聞こえなかったのかもしれない。トリューニヒトが溜息を吐いてボローンに視線を向けると
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