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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―
弐_ここは、地獄
三話
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 「鬼灯様ー!」

茄子がパタパタと駆けていく。
ミヤコは建物の中を見回しながら、目を丸くしていた。
これが、閻魔大王のいる場所か。本当にファンタジーな世界だ。
ふと庭らしき方を見ると、そこには得体の知れない生き物。
金魚?いや、植物か?何にせよ、小刻みに震えて少々気味が悪い。

「か、唐瓜さん」

「何ですか?」

「あれは一体・・・・・・」

ミヤコはそのよくわからない生き物を指差して、唐瓜に尋ねた。
唐瓜はそれの方に目をやり、慣れたように言った。

「あれは金魚草といって、鬼灯様が品種改良されたものなんです。今ではコンテストも開催されるほど、愛好者も多いんだとか。たまに鳴くんですよ」

さすがにこんなものは絵本でも見たことがなかった。
金魚草は風で揺れているのかはたまた自ら動いているのかわからないが、みんながみんな、同じように震えては口をパクパクさせていた。
こんなものを愛好しているなんで、鬼灯という人は少し変人なのかも知れない。

「唐瓜!鬼灯様、いらっしゃったよ」

「おお、よかった!ミヤコさん、こちらへ」

中へ入ると大きく開けた部屋があった。
前方には大きな机と椅子。そばには鏡のようなものが置いてある。
案外、殺風景だとミヤコは思った。
もっとこう、悪い人を懲らしめるような恐ろしい拷問器具類がわんさかあって、壁には血飛沫が、とかそんなことを勝手に想像していた。

「鬼灯様、あの亡者の人、何かちょっと違うんだ」

茄子がそう話している人物。
黒い髪に白い肌、額には一本の角。その切れ長の目が、ギラリとミヤコに向けられた。

「ほう。茄子さん、この方ですね?おかしな亡者というのは」

その男、鬼灯は自分のデスクから離れ、一歩一歩、彼女に近付く。
その気迫というか、何というか、とにかくあまり深く関わってはいけない人のような気がする。
ミヤコはそう思った。

「初めまして。わたし、閻魔大王の第一補佐官で、鬼灯と申します」

鬼灯はそう言うと、軽く会釈する。
完全に無表情な男。ミヤコの顔がわずかに引きつる。

「ど、どうも。加瀬ミヤコです。どうやらわたし、その、死んだみたいで」

「ミヤコ、とは。また最近の現世の方にしては古風なお名前ですね」

鬼灯は顎に手をやりながら言った。

「最近は本当に、亡者の名簿に振り仮名でも書いておかないと、あの人は全く読めないものですから困っているんですよ。当て字というのですか?まあ、わたしの名前もそのようなものですが『光宙』と書いて『ぴかちゅう』とは訳が違いますからね」

「はあ」

「失礼、話が逸れました。それで唐瓜さん。この方とは三途の川のそばで出会ったと」

「あっ、はい。亡者が手違いで迷ってい
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