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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―
弐_ここは、地獄
一話

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 長い長い夢を見ていた気がする。どこか見知らぬ場所をずっと歩いていた。
辺りはどんよりとした山や空や、大きな川、そこに架かる橋。
いろいろなものがあって、絵本の中にいるかのようだった。
まだ少しぼやけてはいたが、ミヤコは意識を取り戻していた。
ああ、疲れる夢だった。そう言って伸びをする。そして、目を見開いた。

「う、嘘やん。ここ、どこ・・・・・・?」

夢だと思っていた世界が目の前にはあった。
頑張って必死に記憶を辿る。確かあの時、横断歩道を渡ろうとして、転んだ?
いや、意識がはっきりしてきた今なら落ち着いて答えを言える。
もっとも、落ち着いている場合ではないが。

「そうや、わたし、車に撥ねられたんや。えっ、ということは」

「じーごーくー、じごじごじごくだよー!イェイ!!」

誰かがこちらに向かいながらうたっているその適当な歌。
ふざけんなよ。ミヤコは立ち上がる。
歌をうたっている奴らの姿が見えた。背が低いし、ただの子供だろう。
ミヤコはその二人の背後からずんずん迫っていくが、全く気付く様子はない。

「あ、あの、ちょっと聞きたいんやけど、いいかな僕たち?」

「えっ?」

「あっ、何でしょうか?っていうか、えっ!?」

「えっ、何ですか」

「あー、いや、迷われたんですよね。案内しましょうか?」

「いや、迷った記憶もないというか。気付いたらここにいて」

「ねえ、唐瓜〜」

今の今まで箒で遊んでいた、白っぽい髪の子供が言った。
唐瓜、と呼ばれた彼は振り返る。

「何だよ、茄子。俺、今この亡者と話してんだけど」

この言葉には、いくつか引っかかるところがあった。
まず、ガキのクセに年上の自分のことを「この」と呼んだところ。
もう一つは、「亡者」だ。

「いや、だってさー、亡者ってここに来た時は白い服じゃん。でもこの人、何か変わった服だよ。ちょっと変だよ」

「そう言われればそうだな。お前、やっぱりそういうとこにはすぐ気が付くよな」

「えへへ〜」

「あの、僕たち、ちょっと待って」

ミヤコが割って入ろうとしたが、黒髪の方は少しムッとした。
茄子、とかいう名前の方は興味津々といった様子で彼女を見上げている。

「あの、僕たち僕たちって、俺たちもう立派な新卒ですよ!それよりあなたはこれから閻魔大王様のところで裁かれるんだから、早くこっちへ」

「え、閻魔・・・・・・大王?」

「だってあなた、もうあの世に来ちゃってるんですから!」


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