第十一章 追憶の二重奏
第五話 手がかり 氷の女帝
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えることなくクールに言い放つ。
そんなタバサにルイズは矢継ぎ早に問いかける。
「だからそれは何で?」
「……助けてくれた」
「わたしも助けに行ったわよね?」
「……それ、は」
戸惑うように言い淀むタバサに、ルイズはすっと、細めた目を向ける。
「シロウが好きなの?」
「…………そん―――」
「うん、分かったわ」
白い雪のように真白な頬を赤く染め上げ、唇を微かに震わせるタバサ。
その姿を目にしたルイズは、タバサが言い切る前に『うん』と一つ深く頷いた。
そして、まるで友好を示す握手を望むように自然と伸ばされる手。
その手には短い杖があり。
「何が誤解よッ! この万年発情男ッ!!」
士郎に向けた杖を一気に振り下ろすルイズ。
反射的に前に立つタバサを胸元に抱き寄せ、盾になるように自分の身体で包み込む。
「―――ッ!」
「っぅ――?!」
胸元でタバサが空気が抜けたような声を上げるが、士郎は数瞬後に訪れるだろう衝撃と痛みに意識が割かれていたため気付かない。歯を噛み締め、タバサに被害が及ばないようにその小さな身体を強く抱きしめる。
ルイズの怒気はかなりのもの。
そのため襲い来る痛みも相当なものだろうと覚悟する士郎だったが、
「……?」
何時までたっても何も起こらないことを不思議に思い、顔を上げてみると、
「あれ?」
そこには杖を目の前に持ち上げ小首を傾げるルイズの姿があった。
ぶつぶつと呟き杖を軽く振っては小首を傾げるルイズの姿に、士郎は千載一遇のチャンスと先程からピクリとも動かないタバサを抱き抱え、そろそろと逃げ出そうとする。
―――が、
「―――かはッ?!」
突然首に何かが巻き付いてきた。
それがルイズが持っていた鞭だと気づいた時には既に手遅れであった。
「……はぁ、仕方ないか。何でか知らないけど、魔法が使えないみたいだし」
「ま、待てルイズ。話し合おう。暴力では何の解決にもならない!」
顔面蒼白、汗を滝のように流しながら士郎は訴える。
ルイズは鞭を握る手に力を込めると、ふわりと優しい笑みを浮かべた。
「―――わたしの気分は晴れるわ」
トリステインの王宮の応接間。
今、その中には二人の人物が向かいあって座っていた。
一人は女性。
このトリステインの女王であり、この王宮の主であるアンリエッタである。
その向かいに座るのは、濃い紫色の神官服を身に纏い、高い円筒状の帽子を被った男であり、その姿から一目見て高位の神官だと分かる。
そう。その通り男は高位の神官であった。上に誰もいない程の。つまり、アンリエッタの目の前に
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