第十一章 追憶の二重奏
第五話 手がかり 氷の女帝
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?」
声も上げることも出来なほど冷たい狂気にも似た殺意を感じ、士郎の全身が萎縮したように縮こまり固まる。
常人なら卒倒してしまいそうになる空気。
しかし、士郎は不幸にもそれを良く知っていた。
「やばい―――ッ!! タバサっ、直ぐにここを離れ―――」
「―――ふふ……ふ。し〜ろう。み〜つけた」
まるで地獄の最下層から響いたかのように、重く冷たい声に、タバサの手を掴み逃げ出そうとしていた士郎の足が氷着いたように固まる。
士郎の背後。森の木々のように立ち並ぶ本棚の奥。天窓や壁際に設置された魔法の明かりが届かない闇に中に、ナニカがいた。
それは、まるで天敵を目の前にし、動けなくなったカエルを飲み込まんとする蛇のように、ゆっくりと、静かに近付いていく。士郎は背後から近づく足音の正体を知るため、石像のように硬くなってしまった首を必死に曲げる。
何とか首を回した士郎の目には、予想通りの姿があった。
天窓から差し込む冷たく清浄な気配を持つ光が照らし出したのは、
「……ルイズ」
ダラリと垂れ下げた右手に杖を、左手に鞭を持ったルイズだった。
「―――あはっ」
士郎の声に、ルイズはまるで幼子のような笑みを浮かべた。
嬉し気に、無邪気に、楽しそうに……。
まるで赤子が初めて捕まえた虫を弄ぶ前に浮かべる顔のように―――。
「……ギーシュは」
確信を持ちながらも問いかける声にルイズは、
「だって、みんなシロウをやっつけようと探してたから……シロウはわたしがお仕置きしないといけないんだもん。だから、道を聞くついでにみんなには大人しくなってもらったの」
「っ、待て、みんな、だと?」
聞き捨てならない言葉に、士郎は『待て』と手を前に出す。
「そうよ。シロウを探してたみんな」
「……軽く百人以上はいた筈だが」
「凄いでしょ」
確かに凄い。
と言うかありえない。
百人以上のメイジの集団を、たった一人で行動不能にする等普通はありえない。
だが、目の前の存在はそれを成し遂げたと言う。
……あなたはどこぞの英雄ですか?
士郎が現実から逃避を始めた頃、ルイズが左手に持った鞭を軽く振り、床にその先端を叩きつける。ピシリと軽く鋭い音が静まり返った図書館の中に響く。
「さて、と。早速シロウにお仕置きをと思ってたんだけど……その前に聞きたい事が出来ちゃった」
淡く桃色に染めた頬を笑みの形に曲げ、『てへ』、と頭に手を当て小首を傾げる様子は一見してとても可愛らしいものではある。しかし、士郎はルイズの目が全く笑っていないことに気付いていた。
士郎の背筋が泡立つ。
「……何で俺がお仕置きされな
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