第十一章 追憶の二重奏
第五話 手がかり 氷の女帝
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ことを?」
「力が一点に集中すれば、面倒な事が増えますからね」
「面倒事、ですか」
「ええ。例えば、ですが、誰かにその力を狙われる……など」
柔和に歪めた目の奥に、鋭い光を光らせる。
「始祖は自分の力を四つに分けた後、こうも告げました。『四の秘宝、四の指輪、四の使い魔、四の担い手……、四つの四が集いし時、我の虚無は目覚めん』と」
細めた目で聖エイジス三十二世を見つめていたアンリエッタは、ふと視線を外すと、何もない中空を見上げる。
「強大な力は、それだけで人を狂わします。手に入れた力が大きければ大きい程、人はそれを使いたくなってしまう。ただ持っているだけ、それだけでも強すぎる力は人を狂わします」
「ええ、その通りです。ですが、対処法もあります。力の向かう先を用意すればいいのです」
「向かう先……『聖地』ですか」
「はい」
頷く聖エイジス三十二世を視界の端にとらえると、アンリエッタは強く瞼を閉じる。
一瞬、膝の上に置いていた手から血の気が引く。
それらに気付いていないのか、頷いた聖エイジス三十二世は強く、説得するようにアンリエッタに話しかける。
「ご存知の通り、聖地は始祖ブリミルが光臨した土地ですが、それだけではありません。我々の心の拠り所でもあります。心の拠り所があり、初めて真の平和が訪れるのです」
「始祖の力をもって、エルフから奪うと」
「『使う』ことをせずとも、『見せる』だけでも十分です。強大な力は、見せるだけで効果があります」
戦わなくとも良いと、声を大にして口にする聖エイジス三十二世に、アンリエッタは膝上に置いていた視線を上げ、しっかりと前を向く。
「『交渉』のため、ですね」
「……ええ」
ゆっくりと、大きく笑みを作り迎え入れるように大きく両手を左右に広げる。
「どうでしょうか? お力をお借りすることは出来ませんか?」
「時間をいただけませんか」
「確かに今すぐお答え出来ないものですね。しかし、それだけの猶予があるかどうか……」
「ガリア……ですか」
残念そうに首を左右に振る聖エイジス三十二世に、その原因を答えるアンリエッタ。それに強く頷いた聖エイジス三十二世は、笑みを浮かべていた顔を悲しげなものにした。
「ええ。己の欲望のままに力を振るう男が、かの国を支配しています。あの男が何時また牙を向くか分からない今、出来るだけ早く結論を出さなければなりません」
「確かにその通りです」
「ですので、我らは出来るだけ早く四つの『虚無』を一つに集めなければなりません。私は、あなたならば一つに集め、そして守りきることが出来ると信じております」
「……過分なお言葉だと思います」
苦笑を浮かべ、否定の言を口にするアンリエッタに向かって、聖エイジ
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