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鋼殻のレギオス IFの物語
第四話
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て響く。弾け飛んだ敵の錬金鋼の破片がニーナの頬を浅く切り裂いていく。

 クレーター状に凹んだ地面の中心にニーナはいた。
 振り下ろしたままの鉄鞭の下には倒れ伏した第三小隊の隊員がいる。その手に握る武器は砕け起き上がる気配はない。

 技を放ち隙だらけのニーナに残った一人、第三小隊の隊長が迫り武器を振るう。
 目の前で起きた理解できぬ事態に隊長の動きは僅かに遅かったがニーナにそれを避けるだけの余裕はなかった。
 塵雷は限界まで溜めた剄をただ一打に収束させ撃ち落す近距離専用の反撃技。守りに堅いニーナが自分に使えるようにと思考の末で変化させた槍打の発展系だ。放った後すぐに動くことは出来ない。

 辛うじてニーナはもう片手の鉄鞭を盾にする。だが堪えられずニーナは吹き飛ばされ受けた鉄鞭は手から離れ宙を舞う。
 もし相手が複数のままならば追撃で容易くニーナはやられていただろう。だがたった一人となった今、ニーナはひたすらに守りに徹っし、活剄が十分なだけ戻るまで時間を稼ぐ為に地面を転がされながらも逃げ回る。
 
 三対一では無理だが二対一なら対応出来る。一瞬でも自分につく相手が二人になればそのうちの一人を破壊の一打で潰す。それがニーナの考えた策とも呼べない策だ。
 四対六を四体五に。そうすればどう足掻いてもニーナに付く相手は最高二名となる。ならば力で叩き潰せる。一体一ならば負ける可能性など皆無。
 ニーナの強さは知られているが、どれほど強いのかは正しく知られていない。それ故の己の力量を利用した傲慢とも言える力任せの戦略。そしてそれは成功した。
 
 飛んだ片割れを拾い、三小隊隊長の振るった一撃をニーナは双鉄鞭で受ける。確かに堪えて受けきり、敵と同時にその場から離れる。

「……うむ、ここまで戻れば十分だ」

 動き回りながらニーナは鉄鞭の握りで腕の力を確認する。
 服は全身土塗れで髪も乱れている。疲労もダメージもある。だがまだ動け、敵を相手するだけの剄は戻った。
 口に入った砂を吐き出し、切れた頬から垂れてきた血を指で拭いながらニーナは守りから攻撃に転じていく。
 
 念威操者を除いた動ける敵は現在四名。内一名はアイクにより撃破寸前。十七小隊はフェリを除き現存三名だ。

「フンッ!」

 遠方より放たれた狙撃をニーナは弾く。狙撃手の位置も既に割れている。
 シャーニッドがフラッグを打ち抜くか敵を全滅させるか。既に時間の問題だ。

「私達の、勝ちだ」

 敵隊長に鉄鞭を振るいながら、睨んでくる視線を見返しニーナは宣言した。





 それから数分後、試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。
 結果は第三小隊全滅による第十七小隊の勝利。
 下馬評を覆し、第十七小隊は対抗試合初戦を白星で飾った。

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