第四話
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後に向ける。
そこにいるニーナを見る。
剄が、爆ぜた。
三人いた敵の一人が反対側に動いたのを見てニーナはアイクが役目を果たしたのを理解した。そして聞こえた発砲音に十七小隊の仲間が皆役目を終えたことをニーナは知った。
アイクに課した役目は二つ。罠に自ら掛かりニーナと分断されること。そして足止め役の一人を時間をかけ叩くことだ。そうすればニーナを相手するだろう一人が一時的に加勢に動くだろうと予想がついた。
シャーニッドに課した役目は一つ。アイクの側へ二人目が動いた時、敵の狙撃手による援護射撃が来ぬようフラッグを守る障害物を打ち抜くこと。
フェリに課した役目は一つ。どこかにあるだろう分断の為の敵の罠を探ること。
仲間は皆、役目を果たした。残るはニーナ一人だけだ。
ほんの一瞬、ニーナは悩んだ。アイクへ敵の増援が向かい、残った二人が僅かに焦り、そのうちの一人がニーナへの攻撃の手を緩めぬよう動き向かうまでのほんの一瞬の間にニーナは思った。
もし初戦の敵の人員が七名なら。もし敵が搦手を使ってきていたら。罠を多用し積極的に攻めていたら。フェリのやる気がなく索敵が遅かったら。アイクが負けていれば。シャーニッドが痺れを切らして撃っていたら。――もし自分自身が、敵の攻撃に耐えられ続けていなければ。
一つでも欠けていればこの状態はなかった。
それはきっと、仕方がないことではなかったのだろうかと。
全力を尽くした上で負けていたなら、悔しくとも納得できていたのではないか。
一瞬にさえ満たない意識に浮かんだありえたかもしれない、ありえない未来。
けれど現実は違う。戦略とも言えない戦略を受けた仲間は役目を果たしきり、自分は両の足で未だ立ち、目の前には敵がいる。
そしてニーナ・アントークが負けを選ぶ理由など欠片も存在し得ないのだから。
問いかけ続けていた問への確かな決意が、確固たる形となる。
一瞬から戻ってきた意識の中、ニーナに向かい敵が迫る。
大きく避けることもせず鉄鞭で弾くこともせず、振るわれる武器をギリギリにまで引きつける。
そしてニーナは今の今まで錬った剄を。
アイクが稼いだ時間の中、守りに徹しながら練り続けて来た二つ目の剄を。
今にも零れ爆ぜそうなほどに押し込められたそれを、
至近に立つ敵へ、放つ。
――活剄衝剄混合変化・塵雷
解き放たれた剄はうねり爆発的な加速を生む。漏れた剄が空気との摩擦でその軌跡に雷を刻む。
後を考えぬ一打限りの破壊槌。ニーナの放った紫電の槌は軌道にあった敵の武器に触れると同時にそれを破壊。止まらぬままに敵に突き刺さる。
舞い上がった土砂が剄の余波で吹き飛ばされ、風の破れる爆発に似た轟音と衝撃が遅れ
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