第四話
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くだけだ。
相手の足捌きや筋肉の反応。動作への繋ぎである予備動作。至近距離での視線誘導。そういった情報から相手の動きを読む、という技術の必要性は薄いのだ。
それでも問題はない。剄の扱えぬ一般人と武芸者が立ち会えば一般人の勝てる要素だなどないのだから。細かな技など用をなさないほどにかけ離れている。
仮に武芸者が使おうと途中で横道に逃げた者の技術だ。それまでの癖が残るし他者の積み重ねられた年月の差が壁となり及ばない。
だが今、この瞬間。それは逆転していた。
『親の都合』で幼少からその技術を教えられてきた対人特化の武芸者は生粋の武芸者を打ちのめしていた。
「逃がさん」
バンの重心の動きと足の筋肉の緊張を気づきアイクが下がるバンを追う。タイミングと方向を合わせ同じに動きバンに距離を取らせない。
既にアイクはバンの大まかな動きの特徴を掴んでいる。間合いを詰め切ったこの状況はアイクに有利だ。
アイクは力の伴わない拳でバンの動きを誘う。重心を制御して軌道を全く別に変化させ振られた南刀を避け、重心を残したままの後ろ足で体を支えて出した前足を上方からバンに打ち落とす。
アイクは蹴り足を地に落とす。足をスイッチさせて進み、足の裏で大地を掴む。重心を急速に下に落とし、地を掴んだ足から伝わる力を受け、全身の関節を稼働させた拳をバンに叩き込む。
「ァ、グゥ」
対汚染獣目的の下地の上に培われた対人技術と対人のみを意識した下地に培われた技術。その差が戦況を分ける。
動作の節目や意識の移動に呼吸の瞬間。意識の「間」を狙い続けアイクはバンに拳を叩き込み続ける。
「意外にしぶとい」
アイクが思ったよりもバンは耐えていた。避けられずともバンは上手いこと動き致命打を避けている。アイクに十分な才能や剄量があったならもう勝負はついていただろうがそれは高望みというものだ。
だがそれでもバンの体にはダメージは深く刻まれている。
アイクは体を流れる剄を急速に切り替え四肢の動きを変える。隙を突かれたら容易く致命傷を追う危険性のあるそれは動作速度の極端な違いを生み相手を錯覚させる。知覚をずらした拳を放とうとしたアイクは、けれど自分に向かう剄の気配を感じ大きく離れる。
ニーナの方へ行っていた一人が衝剄を放ちアイクの方へ動いていた。バンが倒されそうなのが伝えられたのだろう。
相手との距離が開けばアイクの技術の優位性は薄れる。何より小隊員相手に二体一で勝てる実力などアイクにはない。
だが、問題はない。
アイクの役目は終わったのだから。
二人目がアイクに向かうと同時に銃の音が響いた。今の今まで秘していたシャーニッドの発砲だ。
敵陣の障害物がどこかで壊れる音を聞きながらアイクは視線を敵の背
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