第四話
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こ返してやるべきだ。
「これで役目は終わりだな」
アイクの剣は振り終わり、そしてこちらは姿勢こそ崩れているが剣はすぐに振るえる状態。
引き戻していては間に合わない。だから、バンは南刀を首もと目掛け振り抜く。
瞬間、カチリ、と。バネを押す音が聞こえた。
腰だめの姿勢のまま、体の側面をかばうように置かれた相手の空いた腕。その腕が跳ね、崩れていたはずの体を回る。
バンの一刀は背中から飛び出したそれで受けられていた。
「オレの役目はまだだ」
肩を支えにバンの剣を受けたのは本来のそれより重厚に作られた逆手に構えられた短剣だ。
背が櫛の様に峰上になっているそれは、剣の刃を峰に咬ませへし折り、或いは叩き落とすために作られた武器。
「――ソードブレイカー」
ガチリと鈍い金属音が響く。
本来ソードブレイカーが折れるのは細身の剣。ある程度の厚みがある南刀は折れはせずとも刃の半ばまでその峰に噛まれている。
バンの手元と相手の手元。接触点までの距離。既に止まった剣は力点と支点の関係が物を言う。
アイクが腕の力を体の側面へと入れ南刀を容易く下に押しのける。その間に既に相手の剣を手元に戻している。
南刀を引いて外し、更に振るうという動作を両手でするには既に間に合わない。相反する方向への動き、慣性が僅かな時間を必要としてしまう。なにより速度を得る為の推進力を生む時間がない。
アイクの剣がバンへと振るわれる。そこに淀みはない。片手での扱いは慣れているのだ。
片手で威力は低くとも直撃すれば確かな損傷になる。今思えば先ほど膝を落とし疲れを演出したのもこれを狙っての仕込み。そしてこれを受ければバンが押していた天秤も傾くだろう。もう、避けるだけの猶予もない。
――キン
だから、避けるでもなくバンは弾いた。
手元に戻していた南刀の一刀でバンは相手の剣を弾き飛ばした。
「敵の情報は大事だな」
バンは不測の事態をある程度予期していた。
敵を調べるなら武器も重要な情報だ。ロクな噂もないアイクの情報は少なかったがそれでも医務室の常連だとは分かった。使う武器は分からなかったが勤務医学生は錬金鋼の数が一つではなかったことを教えてくれた。だからそれが何かは分からずとも、何かあるだろうことは予期できた。
生真面目な隊長様のお陰というべきだろう。
ソードブレイカーに武器を噛まれたのを理解したと同時、バンは武器を握る手の握力を抜き剄を流していた。外力系衝剄変化・剛剣。剄の刃を構築しようとする剄の余波とアイクの加えた力は南刀を押し、腕を動かさずにソードブレイカーの峰から刃を浮かせた。
柄尻に付いた輪に片手の指をかけ軌道をずらし完全に峰から外した。後は片手で力任せに下から上へと切り上
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