第四十九話 思春期B
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かい目ならいいんですけど、自信がなくて…」
「ごめん、アルヴィン君。混乱しているのはわかるけど、まずは先生との会話を成立させようか」
長年の振り回された経験のおかげか、すぐに軌道修正をはかった先生であった。
******
夏休みの宿題。「観察日記をつけましょう」(題材は自由です。製作活動について書いてもかまいません)
登校日初日は、始業式と提出物や配布物の確認で終わったため、子どもたちは元気に下校していった。職員会議や教室整備を終え、先生は先ほど子どもたちから集めた作文用紙を手に取る。1年生の頃から見てきた子も多いため、成長したな…、と色々感慨深くなりながら読み進めていた。ちなみに何が成長したのかは、ご想像にお任せする。
そして、いつも通り最後の7枚を前に手を止めた。さて、ここからが彼女の正念場である。教師人生において、これほどまでにすさまじいオーラを放つ作文を、目にしたことがあっただろうか。だがそんな経験を彼女は、5年間も続けてきたのだ。人間にとって最大の武器の1つとされるものを、彼女は会得していた。
曰く―――慣れである。
題名:『ねこの観察日記』 作者名:アリシア・テスタロッサ
『私の家ではねこを飼っています。名前はリニスと言って、ふさふさな女の子です。リニスの毛はとても温かくて、抱っこするとすごく気持ちがいいです。5歳の誕生日の時に出会ったリニスは、私にとって大切な家族です』
アリシアの作文から感じられる、情愛の感情。彼女が本当にリニスという猫をただのペットとしてではなく、家族として大事にしているのだと文章から伝わってくる。
『リニスはすごく強くて、クラナガンの元締め姉御として名を馳せています。この前、動物界のドンさんと決闘して見事に勝利を飾ったそうです。その時に使った猫パンチや壁走りのやり方を、他の動物さんに伝授していて毎日大変そうです。でも、すごく生き生きしています』
そして、何かおかしい猫に対する認識具合も同時に文章から伝わってきた。
『私はクラナガンの姉御と呼ばれるリニスが、普段どんなことをしているのか気になりました。なので、今回の宿題で観察をしてみようと思います。事前にリニスや他の動物さんたちにも取材の許可をもらい、頑張りました』
「猫や動物からどうやって許可を……というのは今更なのかしら」
相手はあのテスタロッサ家。猫と会話ができる能力を持っていても、何故かおかしいと思えない摩訶不思議さ。すでに序盤から冷や汗を微妙に流しながら、先生は続きに目を通していった。
《観察日記@》
『夏休みが始まって3日目。日に日に暑さが増してきたように思います。強い日差しが窓から入ってきますが、リニスは太陽の陽が当
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