久遠の理想に軋む歯車
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からさ。連れて行ってやってくれ」
「そりゃあ助かるけど……でも星ちゃんは秋斗さんと話さなくていいの?」
「いいのですよ。白蓮殿は政務等をしっかりと出来ますが私は武人。戦場こそ仕事場であり、早くこの軍にも馴染まなければなりませんから」
本当の気持ちを隠す辺りが星らしい、と白蓮は少し呆れたが何も言わずに桃香を見つめた。
「……うん、分かった。じゃあ明後日の昼にはここを出るからね。兵の割り当ては行軍中に愛紗ちゃんや朱里ちゃんと話し合って決めようか。白蓮ちゃんは本城でゆっくり休んでて。一刻も早く戦を終わらせて帰ってくるから。じゃあ持ってきた仕事の書簡、終わらせてくるね」
これで話は纏まったと桃香は立ち上がって、持ってきた政務の書簡を終わらせる為に置いてある部屋に向かおうと出て行く途中で、
「あ、そうだ。夕食は一緒に食べようよ! 栄養のあるモノ、準備して貰うからさ」
振り返って言葉と共にウインクを残して去って行った。ほんわりした桃香が去った事によって静かな、それでいて居辛くない沈黙が部屋を包む。
「ふふ、こういうのも悪くないな」
「そうですな。桃香殿の想いが大陸を包み込めば、平和な世界を作れましょう」
「秋斗もずっとそれを目指して戦ってきたんだなぁ」
星と白蓮は穏やかな表情で目を合わせて一人の友の事を考えながら、戦で疲れ果てて張りつめた心を落ち着かせていった。
ただ、彼女達は知らない。彼の望みが今の桃香の望みとは決して相容れない事を。
彼が彼女達の一番嫌うモノを進んで行う男だと言う事を。
静かに、少しずつ、彼の周りの歯車は軋み始めた。
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