久遠の理想に軋む歯車
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」
じわりと、桃香の想いが二人に浸透していく。もはやこれ以上語るまでも無かった。
「争いを望まない人と協力して、か。そんな世界になれば……私の家も戻ってくるかな?」
ぽつりと呟いた白蓮。声は震え、瞳は少しだけ潤んでいた。自分が求めて止まない世界はそれであるのだ。白蓮が一番欲しいのは、忙しいながらも笑い合えた楽しい平穏の時間。
「欲の張った人が居なくなったら、絶対に戻ってくるよ。ううん、私に白蓮ちゃんの宝物を取り戻す手伝いをさせて?」
そっと手を重ねられて紡がれた言葉に白蓮は泣きそうになった。利用しようと考えていた自分が愚かしく思えて。それでも泣かず、ぐっと腹に力を込めて桃香を見据える。
「桃香、私はお前に臣下の礼を――」
「そ、そんなのいいよ。平和な世界を目指す仲間として、これから力を貸して欲しいんだ」
慌てて手をわたわたと振って、後に満面の笑顔で言われて、一瞬呆気に取られた白蓮であったが、どこまでいってもこいつは桃香なんだと思い知ってクスリと笑った。
「相変わらずお前は……まあ桃香らしいか。ありがとうな、これからよろしく頼むよ」
ギュッと重ねられた手を握り返して、白蓮は桃香に満面の笑みを返した。
「クク、秋斗殿は大概に変な方ですが……あなたも相当ですな」
喉を鳴らして苦笑した星はそのまま、礼は要らないと言われたので自然体のままで言葉を続ける。彼女の心の主は白蓮ただ一人であり、それを曲げるつもりはもはや無いというのも一つ。
「姓は趙、名は雲、字は子龍……真名を星と言います。この槍、あなたの描く未来の為に振るわせて頂きたいが……如何に?」
「ありがとう。私の真名は桃香。これからよろしくね、白蓮ちゃん、星ちゃん」
星とも握手を交わして、そのまま白蓮達と話をしようと思った桃香であったが、仕事がある事とここに来る前に朱里から言われた事を思い出してそれを諦めた。
「今はまだ戦の最中だから長い時間はここにいれないんだ。秋斗さんと鈴々ちゃんと雛里ちゃんが頑張ってくれてるし、その交代で私と愛紗ちゃん、朱里ちゃんがこれから戦場に向かう事になってるの」
そんな忙しい状態の時に自分達の為にここに来てくれたのかと白蓮と星は心が温かくなった。そして星の頭に一つの考えが過ぎる。
「桃香殿、私も共に戦場へと赴いてもよろしいか?」
「ええ!? ここまでずっと戦ってきたんだから無理しないで本城で休んだほうが……」
驚愕に目を見開いた桃香と白蓮であったが、白蓮だけは星の想いを理解した。
どれだけ彼に会いたいかは知っている。どれだけ寄り掛かりたいかも知っている。でもそれは、星が星として立っている為には、今はいらないモノなのだと。
「私からも頼む。星の力は役に立つ
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