番外7話『ドラム島で試し撃ち』
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に」
「っていうかなんで逃げるんだ?」
「いいから! どこでもいい、とにかく遠くだ」
サンジがうろたえる姿に、やっとルフィやハントもそれに気づいた。
「雪崩がくるぞぉ!」
彼らの上から、雪崩が押し寄せていた。
雪崩とはその名の通り、斜面にたまっていた大量の雪、土砂などが激しい勢いで次から次へと崩れ落ちる現象で、規模の大きなそれは戦争においても用いられ数万人単位もの死者を出したこともある。
その威力はまさに雪山の大災害で、呑まれれば一たまりもないということは明白。それはもちろん超人的身体能力を誇るルフィたちですらどうこうできるようなソレではない。
――これは……間に合わないな。
ハントにしては珍しく、平然と災害のそれを見つめて冷静に分析を下す。雪崩が起こるさまを目視していたルフィやサンジがあたりまえに一目散に逃げようと駆け出すが、逃げても無駄と判断したハントだけが動かずにそれを見つめたまま動かない。
ハントよりも胆力があるであろうルフィやサンジですらうろたえているのにハントが全くうろたえる様子を見せないのはただただ単純に災害というものの威力を経験しているからで、それだけ。
とはいえ、ハントが体験したそれはもちろん雪山のそれではなく、海のそれ。
――師匠に体験させられた津波体験がこんなところで生きるとは……あの時はこの師匠はアホだって思ったけどまさか感謝することになるなんて。
軽く笑みすら浮かべて、まるで余裕の態度を見せる。
「なにやってんだ!」
一秒すらも惜しいこんな時に動こうとしないハントにルフィが叫び、サンジもまた苛立たしげに「早く走れ!」と怒鳴る。
「……」
が、ハントはやはり動かない。
それは人智をこえた災害なのだ。雪崩が起きたことに気づいてから、しかもそれを目視できる位置にいて逃げ出すことなどできるわけがない。
だからこそ、ハントはルフィとサンジを手招きして自分の背中に来るように指示を出す。その目は呆けているわけでもなく、雪崩に対して恐怖におののいているわけでもない。ハントらしからぬ強い意志を秘めた瞳がそこにはある。
雪崩が迫る。
木々をなぎ倒し、崩れる雪が更なる雪を崩して、規模を広げて威力を増していく。人間の身長をはるかに超える高さとなった雪崩が暴力的な音をまき散らして彼らの鼓膜を圧迫し、殺人的な獰猛性をその身に宿してちっぽけな3人の人間へと襲い掛かろうとしていた。
もう逃げても間に合わないと判断したルフィとサンジがハントの気迫にも押されてその背の後ろにつく。それを目の端にとらえたハントが右手の手袋を投げ捨て、雪の中に右手を突っ込み、掌いっぱいの雪玉を持ち上げ、それをそのまま右手で砕く。さらに自分の右手に何度か息を吹きか
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