第三話
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「けっ威勢がいいのはその巨体だけってか!」
妹紅は一度地面を強く蹴りだすと、大ムカデの足を二・三本蹴り落とし根元からへし折っていく。その度に大ムカデは大きく声をあげて苦しんでいた。完全に戦況はこちらが有利だ。妹紅はもはや勝利を確認していた。
だがこれが彼らの戦法だったことに妹紅はまだ気づいていなかった。
「これでよく生きてられたな! これでおわ――」
「きゃああ!!」
止めの一撃を加えようとした瞬間、辺りに少女の叫び声が響き渡る。紛れもないふみ江の声だ。
「なっ!?」
振り返った妹紅は思わず言葉を失っていた。
彼女達の周りにいたのは紛れもない大きな妖怪。しかも今戦っている物と同じ大ムカデだった。それに一体二体の話ではない。十匹前後はいるだろう。
妹紅は一瞬呆気にとられたがすぐに思考を取り戻すと、大ムカデとは反対方向に向けて走り始めた。
「ふみ江!」
戦うことができないふみ江は、一人後ずさりしながら恐怖にかられていた。そんな少女に大ムカデの群れはじりじりと詰め寄ってくる。それに危機に陥っているのは彼女だけではなかった。
「うわっ……くそっ、こいつら!」
大ムカデが数を増やしたことにより妹紅への攻撃もヒートアップしていく。ついにはその対応に追われ、ふみ江を助けるどころではなくなってしまった。
「くそっ……ふみ江! ここから逃げろ!!」
「ええっ!?」
とにかくふみ江を逃がさないと危ない。妹紅はふみ江に指示を出すと目の前の大ムカデ二・三匹を炎で丸焦げにした。
「とにかく逃げろ! 道はつく――!?」
再びふみ江を見た瞬間、妹紅は背筋が凍る感覚に襲われた。
妹紅が見たのは、こっちを向いている彼女の背後にいた大ムカデが、尖った顎肢で彼女の首元を挟もうとしている瞬間だった。彼女はそれに気付いている様子もなく、目を丸めてこっちを見る妹紅を不思議そうに見ている。
妹紅は体を翻してふみ江を助けようとするが、誰が見てもわかるほど大ムカデの攻撃の方が早い。完全になすすべがなかった。
「ふみ江! 逃げろ!!」
「えっ――」
妹紅がそう叫ぶと同時に、辺りに刃物がすれる音が鳴り響いた。
「あっ……」
ふみ江の頭は木から落ちてきたリンゴのようにゆっくりと地面に転がり、彼女の首からはおびただしい量の赤い液体が噴出された。液体は大ムカデの顔や顎肢、そして彼女が来ていた服をすべて真っ赤に染め上げていく。
その光景を目の当たりにしていた妹紅は、しばらく動く事が出来ずその場に立ちすくんでいた。
「う……あ……」
頭の中で鳴り響いたのは彼女と出会ったときに言った自分の言葉だった。お前を守るなんて簡単なことだと自分で言ったのに、彼女を守ることができなかった。ふみ江が不老不死だろうが関係はない。彼女は自分自身に腹が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ