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鋼殻のレギオス IFの物語
第三話
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せた。

 地面は危ないと壁を蹴って宙を動きレイフォンは姿勢を下げたクラリーベルに斬りかかる。少なくとも超間近に接近している間は危険が減る。
 受け止められた、そう思った瞬間、受け止める力が一瞬抜かれる。引き、受け流されたそのままにレイフォンの剣の表面をクラリーベルの剣が滑る。さながら鞘走りからの抜き打ちの如く放たれた剣戟が首を薙ぐよりも一時早く、レイフォンは体を地に沈みこむようにクラリーベルの懐に入る。一瞬遅れた髪の一房が風切り音と共に散ったのがわかった。

 抜き打ちに伸ばされたクラリーベルの右手。その手首をレイフォンの左手が抑え拘束する。クラリーベルの使う胡蝶炎翅剣の塚は両手で持つそれではなく利き腕の指を穴にはめ込み握る拳鍔のそれだ。打ち合いでの力押しには向かず、利き腕を押さえれば剣の危険性は減る。
 無論、この距離ではレイフォンの剣も十分には使えない。剄を込めた剣を地に突き刺し一時手を空ける。

 掴んだ腕を引くと同時体をひねり、引き寄せられたクラリーベルの鳩尾に掌を当てる。当てたまま掌を捻り、瞬間的に小さく踏み込み掌底を打ち込む。
 もう一撃。そう思い動くよりも早く、レイフォンはクラリーベルの手首を掴む自分の手に熱を感じた。火で炙られるかのようなそれに拘束を離し、密着したまま全力でクラリーベルの体を突き放す。刺さっていた剣を抜きレイフォンは下がる。

 わずかに距離があく。胡蝶炎翅剣が赤い炎をような剄に包まれていた。化錬剄の炎だ。あれで炙られたのだろう。焼かれたのは一瞬だったが間近で受けたためかレイフォンの手に小さな火傷の痕があった。

「クラリーベル、一つ聞くよ」
「はい何でしょうか」
「いつも思うけど完全に殺しに来てるよね僕を。刃引きされてても一応凶器だよこれ」

 レイフォンとクラリーベルの剣は刃引きがされている。だがそれでも危険なものは危険だ。刃が潰れているからといっても金属の塊である。金属バットで人をフルスイングした一発病院行きである。
 大怪我などはしないよう、当たりそうならば寸止めをするなど取り決めをしている。
 そういったこともありレイフォンは剣だけでなく拳での打ち込み等も行っている。だが明らかにクラリーベルは守っていないようにレイフォンは思ったのだ。

「大丈夫ですって。ちゃんと避けられてるじゃないですか。危なかったら止めますって」
「いやでもさっき髪切れたよね。刃引きされてるのに切れたよね。避けられなくても絶対止まらなかったよねあれ」
「レイフォンなら避けてくれるって信じてましたから」

 信じてもらえるのは嬉しいが、だからと言って組手で死を意識したくはない。レイフォンからしたらそんな理不尽はサヴァリスだけで十分だ。
 
「それはそうと」
「そう簡単に片付けられても困るんだ
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