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鋼殻のレギオス IFの物語
第三話
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「途中で邪魔して申し訳ありませんでした。では僕はこれで――」
「帰ろうとするな。それに誤解だ」
「守秘義務は守りますので。では」
「だから違う。シャワーを浴びていただけだ。頑なに帰ろうとするな」

 女子生徒を連れ込んで上半身裸とはそういうことではないのだろうか。シャワーとはそういうことではないのか。

「貸せ」

 受け取り票とペンを奪われる。少女が書いた名前を二重線で消し、新たに男が書いて返される。返される際、男が何かに気づいたようにレイフォンの顔をまじまじと見る。そしてその視線はそのままレイフォンの胸元、配達用のネームプレートに向かう。

「お前、レイフォン・アルセイフか」

 嫌な予感がして手元の受け取り票に視線を向けたレイフォンはやはり早く帰るべきだったと悟った。
 そこにははっきりとゴルネオ・ルッケンスと書かれていた。






「茶しかなくて済まない。他の物はシャンテのやつに飲まれてしまってな」
「ありがとうございます」

 レイフォンはゴルネオに誘われて家に上がっていた。既にゴルネオは着替え、今は武芸科の制服に身を包んでいる。共にテーブルを挟んでソファに座った状態だ。怒られた少女、シャンテは少し離れたソファでふて寝している。
 気まずかった。何を話すべきかわからず湯呑の中身を少しずつ飲むだけの時間が経っていた。
 誘われただけであり何を話すべきかレイフォンは特に思い浮かばなかった。そもそもあのサヴァリスの弟だという意識が強い。向こうもそうなのか無言の時間が過ぎていく。
 
「今更だが良かったのか。配達の途中だったのだろう」
「いえ、ここで最後です。少しくらいは」
「そうか」

 そしてまた会話が途切れる。湯呑が空になりそれに気づいたゴルネオがそれを持って立ち上がり台所へ消えていく。
 ゴルネオ・ルッケンスとは本来クラリーベルと共に会う予定だった。だがそれが期せず前倒しになった形になるのだろう。その為の予定も空けていた。帰ったらクラリーベルになんと説明すべきかレイフォンの思考は跳ぶ。

 レイフォンから見たゴルネオはサヴァリスの弟という前知識しかない。
 そもそも名前を知ったのもクラリーベルに言われてから。前に一度聞いただけでロクに覚えていなかったのが裏目に出てしまった。それにゴルネオ側はレイフォン・アルセイフの事をどの程度知っているのか全く分からない。
 
 することがなくレイフォンは部屋の中を見わたす。広さだけならレイフォンの部屋の方が上だが他はここの方が上だ。床には絨毯が敷かれソファも座りやすい。几帳面な性格なのか目立った汚れもなく整理整頓もそこそこにされている。
 身じろぎしたシャンテを見ているとお代わりを入れた湯呑をゴルネオが持って戻ってくる。

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