第三話
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居留守という可能性もある。押しかけや押し売り、変な勧誘も少ないがあるらしい。そういうことへの自衛。めんどうさいだけや単に寝ているだけの可能性もあるが。
少しして二度目を押す。聞き逃しもあるから基本的に二度押し、或いは三度。それでも反応がなければ帰るように言われている。
だが、今回は帰らなくてよさそうだ。扉越しに近づいてくる人の気配がする。
待つ間にレイフォンはカバンを開け郵便物である包みを取り出す。再度、部屋が間違っていないことを確認していると鍵を開ける音がした。
「何かようか?」
開いた扉から聞こえたのはどこか幼さを含んだ声だった。出てきたのは赤毛を後ろで一つに束ね、どこか動物的な雰囲気がある小柄な少女だ。
「ゴルネオさんのお宅でよろしかったでしょうか」
「うん。合ってるぞ」
「郵便です。サインお願いします」
「分かった。何か書くもの持ってるか」
受け取り票とペンを少女に渡す。
受け取り票に目を通しペンを握る少女を見ながらレイフォンは世の中は広いと自分の思い込みを改めていた。
宛先欄に書かれていた名前はゴルネオ、というものであり響きからして屈強な男性をイメージしていた。だが現実、出てきたのはそれとは反した小柄な少女だ。きっとこの少女がゴルネオなのだろう。
などと。
一切そんな事は信じていなかったがまあそれでいいかとレイフォンは納得した。
少女自身受け取り票を見て否定しなかったし部屋の中から出てきたのだ。仕事の説明をしてくれた先輩も宛先さえあっていれば余計な事は気にするなと笑って言っていた。
実際部屋はあっているし簡易確認もした。それに広い世の中ゴルネオという女性がいないとも言い切れないではないか。
「書いたぞ、これでいいのか?」
「はい。こちらが荷物です」
「うむ。確かに受け取ったぞ。ありがとな」
『ごるねお』と。明らかに慣れていない字が書かれたそれをレイフォンは受け取る。自分が頼んだにしては興味津々に包みを開けようとしている少女に笑顔を向ける。
「ではありがとうございまし――」
「おい、待てええええええ!!!」
何か影が見えた。そう思ったら目の前に巨漢の男がいて少女の手の中にあった箱を奪っていた。凄まじい早業だ。
「ゴル、何を怒っているんだ?」
「シャンテ。なぜ怒られないと思っているんだお前は」
男は上半身裸に近かった。ズボンにボタンの止まっていないシャツ一枚。鍛えられているとひと目で分かる屈強な体だ。
目の前の言い合いにレイフォンは巻き込まれたくなかった。気配を消しそのままゆっくり扉を閉めていく。だがあと少しというところで男の手が扉のヘリに掛かる。いかつい顔がレイフォンに向けられる。
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