詠われる心は彼と共に
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た。
一人が弾いて一人が突く。一人が防いで一人が突く。
二人一組で重なるように繰り返される連撃は互いに邪魔をすることは無く、味方が殺されても後ろから別のモノが代わりに飛び出して動きに狂いも無く、徐晃を先頭としてただ淡々と作業のように人の壁を貫いてくる様子に全ての兵達が恐怖に染まっていた。
練度が違い過ぎる。一体どれほど厳しい訓練を行い、どれほど掲げる将を信頼し、どれだけの想いがそこにはあるのか。
戦場の空気が敗色へと一気に引き戻され、直に目にしたことによって心が決まる。部隊と共に後退している暇は無い。あれらにはそんな生易しいモノは効かない。
私はすっと剣を前に構えて奴に指し示した。そのまま言葉を上げようとしたら、驚くことに奴も私に剣を向けた。その突然の行動に、私は呆気に取られてしまった。
にやりと笑った徐晃はそのままボソリと口を動かし、
そしてそのまま……私と、私の前に立ち竦んで奴らを見ていた兵は、恐怖の底に叩き落とされた。
†
「最短路を作れ。俺の為に」
それは短い命令であった。
秋斗が放った言葉は徐晃隊の耳を打ち、瞬時に全ての者が今までの防御主体の戦い方を止めて、攻撃へと意識を向けて行く。
一番前の一人は、ただ突撃した。
一人でも殺そうと槍を突き出し、腹を貫かれても槍を突き出し、最後まで多くの敵を殺さんとして……その命に幕を下ろした。顔に笑顔を張り付けて。
続くように一人、また一人と突撃していく。横合いから穂先を向けられようと、切りつけられようと、貫かれようと気にせずに前へ、ただ前へと。
周りの敵兵はその姿に恐怖した。狂っている、と誰しもが思った。恐怖は足を止め、腕を鈍らせ、心を縛る。その隙が戦場では命取りだというのに。
直ぐに彼は人差し指を立てた片手を上げて軽く振る。右、左と繰り返されるその動きを見た後続徐晃隊は突撃していった仲間の抜けた空間から分かれて、仲間へ武器を振るう敵へと同じような突撃を行っていく。
己が身を気にせず、ただ効率的に数を減らす為、ただ機械的に繰り返される突撃に敵の誰しもが怯えた。精強な孫呉の兵であろうと、異常な狂気溢れる戦場に脚が震えて後ずさり始めた。
ただ一人の兵の例外なく、死に逝くモノ達は笑みを浮かべていたから。
彼らは徐晃隊最精鋭。たった一つの共通意思の元に、するりと命を燃やして咲き誇らせる。
彼の下した命が今生きる全て。後悔の涙も、断末魔の絶叫も、怨嗟に燃える瞳も、最期の瞬間まで持つ事は無い。
彼らは理解している。自身が朽ち果てようとも、己が主は掲げた願いを叶えてくれるのだと。皆が想っていた、皆が祈っていた、皆が願っていた、求めて止まない平穏な世界を作り出してくれるのだと。
果てる一瞬に負の感情など持つことがあ
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