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乱世の確率事象改変
詠われる心は彼と共に
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うな表情を思い出した。
 胸に沸々と興味が湧く。何故私にあのような表情を向けたのか、と。

「孫権様! 徐晃自体は兵が無理やり壁となって止めたので失速しましたが被害が大きく、さらには追随する数百の兵が異常過ぎてこのままでは持ちません!」

 駆けつけてきた兵からの報告で思考が打ち切られる。敵は旗も掲げておらず、混在した状態では最前の様子は良く分からない。この報告はありがたかった。まだ思春と明命の二人が着くまでには時間が掛かるだろう。私では姉様と互角らしい徐晃には敵わない。
 蒼褪めた兵の顔からはどれほど恐怖しているかが見て取れた。間違いなく、敵はここで決める気だろう。なら……

「中央以外は戦線を一押ししてから斜傾陣を敷きつつ後退! 薄い包囲くらいくれてやれ、外側に流せるなら流せ! 中央は突貫してくる敵への対応に集中! 決して抜かれるな! 待機している部隊は私と共に徐々に後退せよ!」

 大きな声で指示を出して自身もゆっくりと後退していく。中央はすでにある程度の所まで抜かれていると見た。これは時間との勝負になるか。押し込まれているのならそのままでいい。この状況の中、下手に陣容を変えてしまえば軽く食い破られて総崩れになりかねない。
 焦れる心を抑えながら思考を巡らせていると、ふいに左翼方向から呂蒙隊が近づいてくるのを視界に捉えた。亞莎が瞬時に判断してくれたのだろう。

――あちらも厳しいはずなのに、兵を減らしてまで私の方を優先してくれるとは……本当に助かる。後は思春と明命が間に合えば……

 ゆっくり戦場が下がっていく中、耳を劈く兵の絶叫が近づいて来た。盛大に紅華が咲き誇るのが鮮明に視界に映る。私は戦線を下げて、中央の部隊はそのままであったというのに、もうあんな所まで来たのか。
 脳髄が警鐘を鳴らしだす。一番精強な中央の部隊をこれほど速く抜いてくる相手に、呂蒙隊程度の補充で相手になるのだろうか、と。
 ゾワリと肌が泡立つ。大きく退く等と、弱気な様を見せていいのか。ただでさえ士気が低下しているこの状況で。
 ここに来て私は……迷ってしまった。
 信じて留まり続けるか、大きく退き下がるか。
 血霧は尚も戦場に舞い続けている。砂埃が風に乗って流れて行くのが近くなってきた。もはや悩んでいる時間は無い。

――私は……

 決心を固めようとしたその時……二つ前の部隊の戦列、その中央に孫呉の兵が弾き飛ばされてきたのが見えた。
 目を見開き、その後方を見やると、血に塗れて私を見据える黒い麒麟が巻き上がっていた砂埃の中から現れる。
 まだ遠くとも良く見えるその双眸は、ただひたすらに昏く、私の事を責めているかのよう。
 蜜に群がる蟻の如く、奴に突撃を仕掛けて行く兵達が見えるも、寸分の乱れも無い連携で動く奴の兵達に妨害されてい
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