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乱世の確率事象改変
詠われる心は彼と共に
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抑え付けて、自分を鼓舞するかのように声を張り上げる。

「敵の大将たる黒麒麟がのこのこと自ら飛び込んできた! 恐れる事は無い! 奴もただの人間、疲れもしよう、鈍りもしよう! 奴の頸を手土産に、我ら孫呉の存在を大陸に知らしめようではないか!」

 ビシリと空気が張りつめるのが分かった。私の声で一気に、恐怖に駆られ始めていた空気が払拭されていく。さすがは孫呉の精兵。こんな未熟な私に……よく従ってくれる。
 ゆっくりとではあるが、私の周りから戦場の空気が変わっていく。これでしばらくは持たせる事が出来るだろう。同時に、

「甘寧と周泰を呼び戻せ。部隊はそのまま部隊長に任せ、二人だけこの場に来いと。この戦場で黒麒麟を……捕えるぞ」

 敵左翼に釣られた二人へと指示を出す。直ぐに味方の兵は伝令へと走り出した。
 討ち取ったらどうなるかは分かっている。先の交渉が成り立たなくなるだろう。でも捕える事が出来たなら、間違いなく有力な手札となる。
 亞莎の計画は最初からそれであった。徐晃を捕えて私達の名を上げ、同時に兵の被害の大きさを理由に戦場から退却すること。何か言われてもこちらは大きな仕事をしたのだから十分だと強気な姿勢を見せておく事も大事。ただでさえ風評が下がっているのに弱った部隊を戦場に出し続ける事など出来ないのだから。
 その時、徐晃の身柄を袁家が欲するのは目に見えている。劉備軍に対する有力な手札となるのはあちらも同じであり、可能ならば姉様達に対抗する将も欲しいのだから。徐晃の身柄を売り渡せば戦場から撤退する手土産に追加されるのも一つ。
 そうなれば、捕えて直ぐに交渉しておけば、呉の地を解放してから見逃す代わりに私達の望みを手伝わせ、袁家に対する毒と為せる。撤退と同時に劉備軍に明命を送り込んでその件を伝えられれば最善となる。
 徐晃が手を結んでくれない事は無いと確信している。姉様が言っていたが、あれは自分達の利を真っ先に考えるモノ、とのこと。知勇兼備の猛将でもあるのだから、ここで自分が死んだらどうなるか考えられないバカでも無いはず。
 それに……あの姉様があれだけ求める程の将が、そんな簡単に戦場以外で死のうとする部類な訳がない。
 姉様は黄巾が終わってから、劉備軍の情報が入る度に徐晃が欲しいと楽しそうに語っていた。まるで恋焦がれる乙女のように。そして何故か、私に必要な人物だとも言っていた。理由を尋ねても自分で考えろと教えてくれなかったが。
 今の私に足りないモノを持っているのか、私の足りない所を補ってくれる者なのか。一人でも成長出来る、などと意固地になる事はもう無い。私は多くのモノに支えられ、導かれ、信じられて王たる事を学んで行っているのだから。ならその一つに奴も加わる、それだけの事。
 戦場の指揮を継続しながら、ふいにあの男の泣きそ
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