詠われる心は彼と共に
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、蓮華に対して蹴りを放った。
「ぐっ!」
鈍い音が戦場に一つ落ちる。幸運な事に弾かれた腕が落ちていた為、肩で蹴りを受ける事が出来たので身体への深刻な損害は無かった。しかし蹴りの威力は強く、蓮華は真横からの衝撃に馬上から投げ出された。
馬の手綱をそのまま持っていれば、馬の首の骨が折れて方向転換も出来ずに敵中に投げ出されるは必至であった為の咄嗟の判断を行えたのは称賛されるべきだろう。
そのまま蓮華は味方の兵列に突っ込み、二人の兵によってどうにか受け止められた。しかし……受け止めた兵の鎧で頭を打ち、朦朧とした意識ではもはや指揮さえ行えない。直ぐに主の危機を判断した二人の兵はその場から蓮華を連れ出し始めた。
劉備軍側からは歓喜の声が上がる。敵大将を行動不能にまで追い詰めたのだ。それを戦場に示す事は大きな意味がある。
対して、駆け抜けた秋斗を迎えたのは数多の敵兵。一瞬の交差であれ、大将の身の安否が不明になった為に孫呉の兵達は意識のスイッチが切り替わった。
そこに顕現するのは死兵。自身の掲げる人物への信が強ければ強い程になり得るモノ。
目を怨嗟に染めて向かい来る敵に舌打ちを一つして、秋斗は薙ぎ払いながら速度を緩めて戦場を駆けて行く。
秋斗に追随する徐晃隊と一つの感情に支配された孫呉の兵はほぼ同じと言ってよかった。ただ……感情の高ぶりは視界を狭め、速さを削り、連携を無くす。どちらが強いかは言うまでも無い。そも、同じ様な兵が来たとしても、徐晃隊はそれを相手取る訓練を紅白戦のカタチでしているので問題は何もなかった。
自然と脚を止めた秋斗の周りに小さな偃月陣が敷かれ、彼を最前の支点として戦場が押し広げられていく。徐晃隊が進撃して来た後方からは破竹の勢いで押し寄せて来る劉備軍新兵。もはやこの戦場の優位は一つに決まった。立て直す為の時間も無い。
そのまま戦場で武を振るう中、秋斗の左の視界に二つ黒い影が映った。
俊足と呼ぶべき速さで駆けてくるそれらは、立ち並ぶ徐晃隊や孫権軍の隙間を縫い、肉薄と同時に二方向から剣と短剣を突きだす。
身体を捻り、片方の刃を躱しながら鈴の音の方向へと剣を振った秋斗は、追撃としていつの間にか放たれていたクナイを避ける為に月光の上から転がり落ちた。
「我が名は甘興覇! 孫権様の一の臣なり! 徐公明……貴様のそっ首貰い受ける!」
「我が名は周幼平! 徐公明、ここから先は行かせません! 孫呉の兵よ! この男は我らが食い止める! 孫権様を守り通せ!」
秋斗の前に立ちふさがったのは主を傷つけられて激昂する思春と、激情を携えながらも親友である亞莎の敗走時の案を思い出して指示を出す明命。
遅れてきた二人の到着で冷静さを取り戻した孫呉の兵達は徐晃隊の猛攻をいなしつつどうにか下がり始めた。ただ、それ
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