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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜Cross world〜
cross world:交錯
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遅れちゃって〜!待ったぁ?」
その声に答えるために、少年は席を立つ。その声の主をからかうために。
そして────
眠いなぁ、と《
終焉存在
(
マルディアグラ
)
》レンホウは思った。
ぴーちくぱーちくさえずる小鳥の重奏は、しかし大通りを通る数多くのプレイヤーたちが織り成す粗雑な喧騒の中に沈んでいった。
大通りに面するテラスで、アンティークな白いテーブルに伸びているのは、ちっこい少年だった。
小柄な身体を隠すように、少しサイズが大きめな真っ赤なフードコートに、だぼっとした黒いズボン。ラフなグレーのシャツ。闇のような漆黒のロングマフラーは、食事には邪魔だろうと現在進行形でテーブルの上に丸めて置いてある。
イグドラシルシティに新しくオープンしたという喫茶店に行ってみたいという理由で、長くなりそうだった女性のお買い物から脱出したまではいいが、正直やることがなくなって暇なこともあった。
頼みの綱だった喫茶店で、試しに注文してみた紅茶はドが付くほどのマズさ。角砂糖何個入れたんですか?と訊きたいくらいの甘さだった。
まだ三分の二も中身が残っているカップは、微妙に少年の身体から遠いところに押しやられている。思い出しただけで胸焼けがしてきた。
サイドメニューであるサラダやパン類を片っ端から注文したものの、NPCレストランではないことを忘れていた。
結果的に、厨房と思しき方向から、うららかな春の陽気とは正反対の怒号や悲鳴みたいなものが聞こえてくることになったのだが、少年はそれを聞かなかった事にしたいらしい。視線をひたすらに大通りに向け、店の内部には決して顔を向けようとはしていない。
それにしても、と少年は思う。
良い陽気である。
基幹システムである《カーディナル》を、SAOクリア時よりは幾らか古いバージョンとはいえコピーしているALOでも、やはり天候という物はそうそう良くはならないというのが通説である。これほど良いのは珍しい。
ヒラヒラ、と目の前を蝶が飛んでいく。
ダメもとで手を伸ばすと、なんと驚いたことに蝶は数秒迷うように伸ばした人差し指の周りを飛び回ると、先っぽに軟着陸したではないか。
「へぇ、
背景小物
(
クリッター
)
にも触れたんだ。それとも圏内だから、ってゆう事なのかな?」
ぐでーっ、とテーブル上に寝そべっていたレンは気の抜けたような声とともに、いかにも注意力散漫ですという感じで蝶を眺める。
数多のMMORPGの中でも、かなりファンタジー要素の強いALOだからこそなのか、蝶の外見も現実世界のそれとは思えない配色だった。
メタリックな素体の中心辺りに大きな目玉が一つ。せめて目玉がなければまだ可愛げがあるのに、と思いつつレンはふぅー
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