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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第九話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その3)
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らこそ皇帝を守り帝国を守る選ばれた者達です。我らの意志こそ優先されるべき、そうではありませんか」
「……」

凄い、このわけの分からん自負はどこからくるんだ? 貴族だからと言う訳じゃないな、こいつが何処かおかしいんだ。エーリッヒも毒気を抜かれて唖然としているし俺だって目が点だ。アンスバッハ准将も妙な目でコルプト子爵を見ている。何か新種の生物、いや珍しい生き物でも見た様な表情だ。

「コルプト子爵家は賤しい平民に弟を殺されたのです。あの賤民を殺さなければ我が家に付けられた不名誉は拭えません。あの男だけでは無い、あの小僧、陛下の寵を良い事に増長するあの小僧にも償わせなければ……」

コルプト子爵はエーリッヒを見ていない。宙を見て何処かうっとりするような表情をしている。こいつ間違いなく危ない奴だな。友達にはなりたくないタイプだし友達も少ないだろう。何だってこんな馬鹿がコルプト子爵なんだ?

「陛下もようやく目を覚まされたようだ。あの小僧に爵位などキチガイ沙汰、世も末だと思っていたが、お取り止めになったのですからな」
エーリッヒが首を振り、一つ息を吐くと俺に視線を向けた。表情から怒りは消えている、呆れているのだろう。

「では復讐を止めるつもりは無いと」
「当然でしょう、これは我ら貴族の高貴なる義務なのです」
「そうですか……。では止むを得ませんね。好きにされたらいいでしょう」
エーリッヒがそう言うとコルプト子爵が満面の笑みを浮かべた。成り上がりの新公爵に貴族の義務を教える事が出来たと思っているのかもしれない。

「ようやく御理解していただけたのですな、喜ばしい事です。ブラウンシュバイク公爵家の御当主に我らの義務を御理解いただけぬことなどありえぬと思っていました。それでこそ我らの盟主、ブラウンシュバイク公です」
「……」
図星か……。良い気なもんだ。

「それでは私はこれで失礼させていただきます」
そう言うとコルプト子爵は席を立ち一礼して歩き出した。エーリッヒは見送ろうとはしない。無言で正面を見ている。通常客が退出する時、主人は客を見送るのが礼儀だ。それを行わない……。コルプト子爵にはその意味が分からないようだ、愚か者が。お前は新公爵を怒らせたのだ、これ以上ないほどに……。部屋を出る直前だった。エーリッヒがコルプト子爵を呼び止めた。

「コルプト子爵」
冷たい声だった。エーリッヒは正面を向いたままだ、彼の視線はコルプト子爵を無視している。
「何でしょうか」
「今後、ブラウンシュバイク公爵家はコルプト子爵家との関係を断たせて頂く。以後当屋敷への出入りを禁じます」

何を言われたのか分からなかったのだろう、コルプト子爵は呆然としている。
「寵姫の争いを煽る、軍規を正した士官を殺そうとする。陛下の御意志に背くかの
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