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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
戦王の使者篇
09.洋上の聖戦
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ちゃん」
浅葱たちを覆っていたマントはいつの間にか姿を消し、いつもの姿に戻っている彩斗に拳を一つ入れ込む。
鈍い音が甲板に響く。
「私のことを那月ちゃんと呼ぶなと言っているだろう」
「ちょ、今回は強すぎじゃない」
「おまえが船に眷獣で突っ込んだ罰だ」
甲板にうずくまる彩斗から雪菜へと那月が視線を移す。
「私はこいつらを安全な場所まで連れて行く。おまえらはどうする、転校生、緒河。一緒に来るか?」
眠っている浅葱たちを抱き寄せて、那月が訊いた。
「わたしは暁先輩と合流します。監視役ですから」
「ふん。仕事熱心だな」
好きにしろ、と言いながら空間を歪めた。眠り続ける浅葱と凪沙を、乱暴にその中に放り込む。
「だが、おまえたちが助けに行くまでもないかもしれんぞ」
そう言い残し、那月は姿を消した。
増設人工島
(
サブフロート
)
の上では、古城の眷獣が、手負いの古代兵器を圧倒していた。
海の中には、今だ沈黙している古代兵器が数体いる。
「さて、行きますか!」
彩斗が気合いを入れたような声を出し、一歩踏み出そうとする。
「待ってください、緒河先輩」
雪菜の声に彩斗は、振り向き歩みを止める。
雪菜は自分の気持ちに戸惑っていた。古城が出現させた緋色の鬣を持つ
双角獣
(
バイコーン
)
が意味するのは、古城が誰かの血を吸ったということだ。そのことに苛立ちを覚えてしまっている。
だが、それは監視役である自分に黙って勝手に他人の血を吸ったからであると雪菜は自分で自分を納得させた。
「先輩の眷獣の中にナラクヴェーラの動きを止められる眷獣はいますか?」
予期せぬ質問に彩斗は戸惑ったような表情を見せる。
「止めることはわかんねぇけど……」
少し気が引けるような表情だが、彼は確かな言葉で言った。
「確実に破壊できる眷獣ならいるにはいるが」
真祖と戦うための兵器を彼は破壊できると言ったのだ。そんなことをすらすらと言うのだ。
だが、雪菜は先ほどの考えを否定する。彼は、真祖さえも上回ると呼ばれる伝説上の吸血鬼、“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”の力を受け継いでいるのだから。
だが、ただの少年がなぜそんな力を持っているのだろうか。
なぜ、これまで獅子王機関は彼の存在に気づけなかったのか。わずかな疑問が幾つも浮かんでくるのを振り切る。
「それなら行きましょうか」
「いや、それが……」
雪菜が一歩踏み出すと今度は、彩斗が頼りない声を発する。
その言葉に振り返る。
「確かに所有はしてるけど、俺になついてるわけじゃねぇんだよな」
彩斗の言葉の意味はすぐにわかった。つまり、古城のように眷獣を従えてるわ
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