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久遠の神話
第九十四話 憂いが消えてその六

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「それは」
「それはどんなのかな」
「駅弁の中に御飯と」
「お米だね」
「はい、それと」
 それに加えてだった。
「蟹とイクラ、雲丹が入っているものでして」
「それがいいんだね」
「とても美味しいです」
 にこりとしての言葉だった、
「これが」
「ではそれを」
「はい、お一つですね」
「いえ、二つです」
 一つではなくだ、それだけだというのだ。
「頂きます」
「お二つですか」
「そうです、お腹が空きましたので」
 一つでは足りないというのだ、つまりは。
「ですから」
「そうですか、それでは」
「はい、二つ頂きます」
「それでは」
 こうした話をしてだ、そのうえでだった。
 アポロンはお茶も貰いそうしてその海鮮弁当を食べた。見れば北海道の函館名物とある。箸を取り一口食べてだった。
 すぐにだ、彼は笑顔でこう三人に言った。三人共空港に来る前に食べているので今は弁当を食べない。食べているのは彼だけだ。
「美味しいね」
「推薦通りですね」
「うん、美味しいよ」
 聡美に笑顔で述べる、まさにそうだと。
「これが駅弁なんだ」
「他にも多くありますが」
「こうした美味しいものをだね」
「日本人は食べています」
「いい国だね」
 美味しいものが普通に食べられる、それ故にだというのだ。
「それはまた」
「そうです、日本は美味しいものが好きなだけ食べられる国です」
「それも様々な国の料理がだね」
「はい」
 聡美は兄に日本の食事のレパートリーの広さについても答えた。
「ですから私も」
「楽しんでるんだね」
「そうしています」
「ギリシアにいてはわからないね」 
 日本のことはとだ、アポロンは箸を上手に使いながらそのうえでその海鮮丼を食べつつ言うのだった。
「最近では和食のレストランがギリシアにもあるし海のものは元々ギリシアでも食べているけれど」
「それでもですね」
「ないね、特に」
「特に?」
「醤油だね」
 弁当についているそれを雲丹等の上にかけている、その味も味わいながらの言葉だ。
「これがいいね」
「日本のお醤油ですね」
「醤油も知っているよ」
 アポロンにしろだというのだ。
「ローマの魚醤もね」
「あれですね」
「あれもいい調味料だったよ、けれどね」
「その大豆から作っているお醤油もですか」
「いいね、香りも」
 醤油のその香りもだ、アポロンは好意的に評価した。
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