第1部
第1楽章 内乱
第2話 開幕
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三村はそう言いながら振り返った。そこには大破炎上した車両と、血に濡れた路面。袋に収まった僅かな死体だった。負傷者を優先して搬送したらしい。そして数少なかった死体も後方へと送られていく。その傍らを国内軍のレオポルド2PSO戦車を装備する戦車小隊が通り過ぎていった。
国内軍戦車小隊を率いるその男は緊張していた。彼にとって中尉に昇格し、自分の小隊を持って初めての本格的な実戦だった。
小隊が陸軍の歩兵部隊―――つまり、三村隼也少尉や山田絢一等軍曹の小隊―――の傍らを通った時、これが実戦だと改めて実感した。飛び散った肉片、地面へと広がる赤い海。それを陸軍の歩兵達は黙々と片付けている。
俺には出来ないな、と男は思いながら額の汗を戦車の中で拭った。“6年前”のあの事件を思い出したのだ。初めて参加した任務。“覆る事のない理が歪んだ”あの惨劇。
「――か―し―――さ―――尉――尉殿?
あ――もう――。中尉殿!」
「あっ、あぁ、すまない。どうした?」
「どうした、じゃありませんよ……。ボケッとしてないで周囲を警戒してください!」
「すまん。昔を思い出していた。6年前の忘れ去りたくても忘れ去る事の出来ない物を、ね……」
その男の言葉は車内の空気を“殺し”た。静寂が世界を覆い包んだような感じだ。だが、戦闘は続いていく。男は任務を心の中で再確認したこの部隊の任務は“火消し”であり、千切られそうになった防御線を繋ぎとめる事だった。もっとも、鏃を務めている部隊も居るが。
防御拠点に近付くごとに戦闘音が激しくなっていく。銃声と爆音だ。まだ、悲鳴は聞こえない。
「全車、戦闘準備。視界が悪い。突発的な戦闘に注意しろ。」
【【【了解】】】
火災による煙が酷い。赤外線映像が無ければ戦闘は困難、と言うほどではないが、きつい物だ。
「廃棄された車両に注意。慎重に乗り超えて行け」
赤外線映像で確認できた自動車を、エンジンの馬力に物を言わせて乗り越えていく。いや、ここは重量に任せて踏み潰している、と言った方が適切だろう。
金属が軋む音がエンジンの騒音の中で響き渡り、履帯がアスファルトで舗装された道路―――とは言っても整備されておらず、劣化してボロボロだが―――を抉り取る。
小隊の先頭―――2号車が交差点を左折した時、その車両の左翼で爆発が起きた。破片がレオポルド2PSO戦車の装甲を叩く。
【接触!
友軍が戦闘中、交戦します!!】
先頭車両からそう無線が入り、120mm滑腔砲から多目的対戦車榴弾が放たれ、拠点の向かいに着弾する。そのまま2号車は車体を敵の方向に向けた。
「2号車はこちらが展開するまで援護射撃。残りは我に続け!」
【【【了解!】
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