暁 〜小説投稿サイト〜
闇夜の兵士達 〜戦争の交響曲〜
第1部
第1楽章 内乱
第1話 後方基地 
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 山田絢一等軍曹は戦闘服を身に付けると宿舎を出た。戦闘服はデジタル迷彩だ。財務省曰く、マルチカムは高すぎる為に却下、だそうだ。
 この基地はなだらかな山に沿うように作られており、そこから街が見えた。もちろん市民もだ。そんな所に基地があれば、門前で人間の鎖などと言う訳の分からない変な物が出来そうだが、それを行いそうな人間は、すでに“夜の霧”によって行方不明になっていた。
 この“夜の霧”とは、敵性工作員、及びその協力者をあぶり出し、影で葬り去っている者達の事と言われ、まるで神隠しにあったように人が消えていた。
 彼らが所属している組織は二つ在ると言われ、一つは国防省、もう一つは内務省だ。
 内務省は国内の治安を維持する為に、自前の軍事組織を有しており、それらは内務省国内軍と呼ばれていた。彼らの代表的な活動を挙げれば、防諜と治安維持を主としており、彼らによって国防省の高官が処刑されることもあった。その人物が本当に敵と繋がっていたかは、今となっては分からないが……。まぁ、内務省の徹底した監視のお陰で、機密情報が外部に持ち出されることは無い。
 だが、内務省と国防省の関係は劣悪で、実際に軍事衝突したこともあった。また、戦争と共にさらに悪化し、味方の中の敵、と言っても過言ではない。
 絢は何時も疑念にしていた事があった。義父は内務省の人間だが、どうして私を彼が敵対している連邦軍の幼年学校に入学させた事だ。間諜や牽制の意味合いも考えたが、その幼年学校に裏は無かった。全く、分けが分からないよ。
 そう思いながら、絢は宿舎を出てランニングをしていると、後ろから部下達が走ってきた。

「おはようございます、一等軍曹!」
「おはようございます!」
「おはようございます、姉御!」
「おはようございます、鬼婆殿!」
「おはよう、諸君!!
 そして、最後に姉御と鬼婆って言った奴、後で車庫裏に来いやっ!!
 誰が姉御と鬼婆だ!!!!
 たっぷりしごいたる!!!!!!!!!」

 絢は後ろから走ってきた部下達に、挨拶を交わしながら抜かれて行く。元々、彼女はゆっくりと走るのが好きだったからだ。必死に走るのは銃弾に追われている時だけで十分だ。
 もっとも、彼女は18歳だったが、追い抜いていった部下達は皆、彼女より年下の志願兵達であり、基礎訓練しか受けていない。それだけでも一応使える兵士になるのから恐ろしい事だ。
 だが、まだ若い為か色々と面倒を起こす。先ほどの事もその一つにしておこう、うん。後で徹底的に訓練してやる。まぁ、あいつ等と比べたらマシだ。絢はそう思いながら、宿舎へと向かう。

「はぁ……」

 絢は溜息を吐きながら目の前を見た。閑散とした宿舎。当然だ。殆どの兵士は朝の自主訓練をしている筈だ。だが、例外が二人。少女はそう思いながら宿舎
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