閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
69.聖剣へ
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へ。
「うわぁ……いったい何段あるの、これ」
リズがそう囁く。直径二メートルほどのトンネルの床に造られた下り階段。俺たちがトンキーに連れられて最初にアルンまで来た時に通った道だ。
「んー、アインクラッドの迷宮区タワーまるまる一個分くらいはあったかなー」
先頭のアスナが応えるとシノン以外の初見組が同時にうへぇという顔になる。
「あのなぁ、ノーマルなルートでヨツンヘイムに行こうと思ったら、まずアルンから東西南北に何キロも離れた階段ダンジョンまで移動して、モンスターと戦いながら奥に進んで、最後に守護ボスを倒してようやく到着できるんだぞ」
「最速でも二時間弱くらいはかかったよな。でもここ降りれば五分だぞ。楽にもほどがあるだろ」
「でも、あたしたちの誰かがいないとトンキーが来てくれないよ」
トンキーがいなければ底無しの大空洞へとバンジージャンプを決めてあっさり地上に逆戻りすることになる。
「まあなんだ、そういう訳だから、文句を言わずに一段一段感謝の心を込めながら降りるんだぞ諸君」
「あんたが造ったわけじゃないでしょ」
後方のシノンがキリトの言葉に相変わらず冷静なツッコミを決める。
「御指摘ありがとう」
「フギャア!!」
物凄い悲鳴が後方から響いた。後方を振り返るとケットシーのアーチャーは、キリトの顔を両手で引っ掻こうとしていた。
どうやらキリトがケットシーの象徴である尻尾を握ったらしい。人間に本来ない器官の尻尾は、握られるとなんとも変な感じらしいというのがシノンの感想だった。
「アンタ、次やったら鼻の穴に火矢ブッコムからね」
女性陣の皆がやれやれという表情で首を振っている。
「怖れの知らねェやつなおめぇ」
クラインがなぜか感心したように唸った。
「バカだな、お前」
五分もしないうちにパーティーは、階段を突破した。
分厚い雪と氷に覆われた、美しくも残酷な常夜の世界。地上の光がわずかに注ぐのみ。真下には、ありとあらゆる光を吸い込むような、底無しの大穴。ーー《ボイド》
無数に這い回る巨大な根っこ。地上の世界樹の根だ。薄青い氷塊が天蓋から鋭く突き出されている、逆ピラミッド型の俺たちの目的地、《空中ダンジョン》。
アスナがパーティーに凍結耐性魔法をかける。
「おっけ」
アスナの声を受け、リーファが頷くと、口笛を吹き鳴らした。
数秒後、風の音に混じって、くおぉぉー……ん、という啼き声が届いてくる。
平べったい胴体の側面から、四対八枚のヒレに似た白い翼が伸びている。体の下には、植物のツタ状の触手が無数に垂れ下がっている。そして頭部には、片側三個ずつの黒い眼と、長く伸びる鼻。
「トンキーさーーん!」
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