第三章 始祖の祈祷書
第四話 錯綜する思い
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のこと? どうしてって、あなたが落としたから拾ってあげたのよ」
「落としたって……あっ! あの時」
キュルケの言葉でルイズは理解した。先程、落ちる始祖の祈祷書を掴むために咄嗟に動いた瞬間、落としてしまったのだ。
「でも何なのこれ? ……ヒトデ?」
「セーターよっ!! なんでヒトデなのよっ!?」
「何でって……はぁ……これのどこがセーターなのよ……」
キュルケはわたしの作品を持ち上げ、まじまじとそれを見ると、疑問の声を上げる。それにわたしが怒鳴りつけると、キュルケは目を丸くしたあと、呆れた顔をしてため息を付いた。
「セーターねぇ……どうせシロウに編んであげてたんだろうけど……これは渡さない方が無難じゃない?」
「むっ……わ、分かってるわよそのくらい……」
「ならいいんだけど」
わたしはキュルケから顔をそらしてむくれていたけど、キュルケが話しかけてきた時のことを思い出し、ふくれっ面のままわたしはキュルケに声をかけた。
「そういえば、わたしに聞きたいことって何よ?」
「えっ! ええ〜と……それは……」
「? どうしたのよキュルケ?」
わたしが声を掛けると、キュルケは急にもじもじとし始めた。
「は、本当にどうしたのよキュルケ?」
わたしが今までに見たことがないキュルケの態度に戸惑っていると、キュルケはもじもじとしながら、赤く染めた顔を背けてわたしに話しかけてきた。
「その……シロウのことなんだけど……」
「はぁっ!! シロウのことっ! 何よキュルケ……シロウがどうしたのよ……」
キュルケの口から士郎の名前が出た瞬間、緊急警戒警報が頭の中に響きわたる。急速に嫌な予感が高まりつつあるのを感じ、思わず手に力が入り、ミシミシと国宝である“始祖の祈祷書”から嫌な音が聞こえてくる。しかし、キュルケはそんなわたしの様子に気づくことなく話し続ける。
「ほらっ、最近よくシロウに話しかけてるメイドの子がいるじゃない? あの黒髪の」
「……シエスタのこと?」
「そう……シエスタっていうの。ま、まあ、その子がさっきシロウと一緒に外の物置の方に行くのを見たんだけど。ほら、最近あの子、よくシロウと一緒にいるじゃない」
別に気にしてなんかいないわっ、とでも言うようにそっぽを向いて話していたキュルケだが、バッ、と唐突にルイズに振り向くと一気にまくし立て始めた。
「べっ別にっ! ふっ不安になったわけじゃないわよっ! そっそれに! 一人で確かめるのが怖いからルイズに聴きに来たわけじゃ……あれ?」
しかし、振り向いたキュルケの目の前には、ルイズの影も形もなく。ただ、巻き上げられた砂だけが舞っていた。
「……ルイズ?」
キュルケの呆然とした声が広場にぽつんっと
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