アルマ・クラストールという男
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を賭けられなおかつこの広い海の世界で最も強い者と呼ばれている海賊が、現在は仲間も作らずたった一人で旅を続けているのだ。昨今大海賊時代とまで呼ばれるようになってしまった世界の流れへ歯止めをかけるのに、これほど狙いやすい獲物もいまい。時の大海賊白ひげでは配下が多すぎて手が出せないが、単独行動を続けなおかつ知名度の高い彼であれば、捕えることのメリットがそのための労力を上回ると判断したのだろう。
そして青年は、そんな向こうの思惑を理解できるからこそ思う。
(……舐めんじゃねえよ、世界政府)
世界最強その名より、三大将を上に見る。その傲慢が気に入らない。
彼は自身が誰よりも強いという自負を持つがゆえに、他者の驕りを認めない。だから教えてやるのだ。お前たちが一体誰に喧嘩を売ったのかを。
刻針海賊団船長。世界最強の男。懸賞金額九億六千万ベリー。そんな男を大将三人ぶつけた程度で捕えられると思っているのなら、勘違いも甚だしい。
己が矜持を侮辱されたという怒りがふつふつと滾る。しかしそれを決して相手には悟らせず胸の奥だけに秘めて、青年は口を開いた。
「そうさなぁ。たしかに、お前さんらが背負ってるもんも相当重いんだろう。決して譲れやしないんだろう。……だがな、それでも――」
ああ、それでも変わらない。それだけは決して変わってはならないのだ。
笑え。
不敵な笑みを浮かべ、彼は世界も震えよと宣言する。
「――――勝つのは、俺だ」
「「「――――ッッッ!!」」」
気圧されたように大将たちが半歩下がった。まだ戦いは始まってもいないというのに、張り詰めた緊張感で額に汗がにじみ出している。
「さあ、海軍の威信と最強の名を賭けた大勝負といこうじゃねえか」
青年は腰に下げた刀の柄へとそっと手を添えた。銘を『星嵐』。最上大業物工の一振りに数えられるその刀は、ただひたすらに強度と切れ味のみを追求した結果生まれた逸品だ。漆黒の刀身にまるで星空のような銀の光の粒が散っているためこの名がつけられた。
剣気とも呼ぶべき斬るという意志を握る刃へと束ねていき、青年は戦闘開始の合図となる名乗りを上げる。
「世界最強、“刻針”アルマ・クラストール。推して参る――」
「……っ! 我らとて、正義の名を背負う以上負けるわけにはいかんのだっ!! だから貴様はここで終われ刻針!!」
海軍の威信を賭けて。センゴクの咆哮と共に他二人の大将たちも一斉に戦闘態勢へと入る。
青年、アルマはその魂の叫びとも言うべき雄叫びを正面から受け止め、その上でそれを叩き潰すと決めた。
戦うからには容赦はしない。そうとも、始めから全力だ。
彼我の差、約十五歩。されど一足で事足り
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