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《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
ネメシス
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不意に絞り出したような声がメイソンの耳に届いた。反射的にそちらへ銃口を向けたメイソンは、しかし次の瞬間、思わずぷっと吹き出した。派手に瓦礫に埋没し、上半身だけ露出させたプレイヤーがそこにいたからだ。

「良い格好だな、最高にイカしてるぜ。……つーか馴れ馴れしいぞお前。俺の知り合いか? 初対面のはずだろ、俺とお前はさぁ」

「はっ!? 俺のこと覚えてねぇのかよ! バカかてめぇ!?」

「……否定はしねぇが、癪に触るから黙れ。いちいち雑魚の名前なんか覚えらんねぇっつーの」

心底どうでもいい話だと思った。隠すつもりもなかったので、態度と言葉で丁寧に伝えてやると、その男は屈辱にぶるぶると身を振るわせた。自由に動かせる両手で地面を叩いて罵っている。

「調子乗ってんじゃねぇぞクソ! お前、こんなことして《ネメシス》が黙ってると思ってんのか!?」

「……ネメシス?」

どこかで聞いたことがある響きだった。それをきっかけに、メイソンは半年以上前の記憶を慎重に掘り下げていく。埋没したピースを復元するのは、殊の外難しい作業である。

数秒の後、カチリと何かがはまる音がした。

ーーあぁ、あれか!

とアホ面で叫ぶことをすんでの所で押さえ、メイソンは唇をつり上げて言った。

「あっは、思い出したぜ。頭数だけは立派なボンクラ集団じゃねぇか! どうりで歯ごたえがねぇわけだ。するとお前はあれだろ…………そうだな…………リーダの腰巾着的な何かか?」

……参った。雑魚の話になるとどうも記憶力に自信がない。それを挑発と勘違いしたらしいプレイヤーが、顔を真っ赤にして怒鳴った。まさに怒髪天をつくといった様子だ。

「巫山戯たこと言ってられんのも今の内だ! もうゼロさんには連絡はつけといた。あの人がそのつもりなら、今頃は出口封鎖してお前のこと殺りにくるぜ!」

「ふん、おもしれぇ」

メイソンは笑みを張り付かせたまましゃがみ込み、喚く男の眉間にゴリッと銃口を押しつけた。彼は怯んだように口を閉じる。彼の表情を楽むようにのぞき込んだメイソンは、べろんと長い舌を出して馬鹿にした。

「ーーさぞ気分が悪りぃだろうな。スコードロン総出で、プレイヤーの一人も仕留められなかったさぁ。目に浮かぶようだぜ、お前らが猿みたいに顔真っ赤にして騒ぐ姿がよぉ」

「……っ! 黙れ! お前っ、お前がっ!」

男はもはや興奮しすぎてろくに喋れないようだった。良い趣味ではないと自覚しているが、完全に屈服させた人間をからかうのは楽しい。しばらくの間存分に男の様子を観察したメイソンは、遊んでいる暇もそれほどないと思い至り、ひと思いに引き金を引いた。

パン、と乾いた銃声が空気を振動させる。薬莢が地面に落下して音を立てる頃には、男のアバターはポリゴン片
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