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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七話 説得
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ューニヒトは怯まずに見返した。
「その後の事を決めておきたいんだ、君達とね」
益々二人の視線が強まった。何を言いたいのかが分かったのだろう。
「会戦が迫っている。とりあえず暫定政権で会戦を乗り切るしかない」
「……」
「私が最高評議会議長になる。ホアンとレベロは協力してくれる。君達も私に協力して欲しい」
最高評議会で互選により議長を選び暫定政権を発足させる。戦争に勝てば暫定政権から暫定の文字が消えるだろう。
ターレルが私とホアンに視線を向けた。
「何時からだ、何時から君達はトリューニヒトと組んでいる?」
さて、何と答えよう? ホアンに視線を向けたが彼は苦笑を浮かべて肩を竦めた。
「それが大事な事かな、ターレル副議長、ボローン法秩序委員長。私、トリューニヒト、レベロの三人は協力体制に有る。或る目的のためにね。そちらの方が大事だと思うが……」
二人がホアンに視線を向けた。睨むように彼を見ている。
「……では、その目的とは」
「和平だよ、ターレル副議長、ボローン法秩序委員長」
トリューニヒトがターレルの問い掛けに答えると部屋に沈黙が落ちた。五人が微動だにせず沈黙している。こちらは手の内を晒した、相手はどう出る……。
「本気で言っているのか? トリューニヒト」
「本気だ。君は一度もその事を考えた事が無いのか、ボローン」
「……」
答えが無い。しかし表情は沈痛と言って良かった。やはり一度は考えた事が有るのだ。
「ヴァレンシュタイン中将とレムシャイド伯の会話を君も見た筈だ。このままでいいのか?」
ボローンが大きく息を吐いた。ターレルが水を飲もうとしてグラスを取ったが途中で止めた。
「君達も分かっているはずだ。同盟はもう限界に近い。増税による市民への負担増、そして働き盛りの三十代、四十代の男性の減少、それによる出生率の低下……。年々人口は減少しそれによって税収も減少している、しかし軍事費は増加する一方だ」
「……」
「国債の発行により不足分を補っているが何のことは無い、借金を減少していく次の世代に残しているだけだ。負担はより大きいものになるだろう。このままでは国家が戦争によって喰い潰されかねない。同盟は破滅へと疾走しているんだ。戦争を止めるしか破滅を回避する方法は無い」
「……」
「レベロの言う通りだ。同盟はもう限界だ。今は戦争に勝っているから市民はそれを直視しようとはしない。しかし我々はそれで良いのか? 国政の担当者としてそれが許されるのか? ターレル副議長、ボローン法秩序委員長、君達は今同盟が抱える危機を見過ごす事が正しいと思うのか?」
「……」
二人とも無言のままだ。私の言葉にもホアンの言葉にも何の反応も示さない。ただ黙って何かを考えている。ようやくボローンが視線を上げた。
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